文学史 / 近代・現代文学史

戦後〜現代文学(戦後派・第三の新人から現代まで)

要点整理

戦後〜現代文学とは何か

戦後文学は、1945年の第二次世界大戦終結以降の文学を指します。敗戦という大きな断絶を経験した日本の作家たちは、戦争体験や、価値観が大きく揺らいだ社会の中での人間の在り方を、それぞれの方法で描き出しました。この単元では、時期の近い戦後派第三の新人という2つの作家群の違いを軸に、現代までの流れを整理します。

作家群 登場した時期 中心となるテーマ
戦後派 終戦直後(昭和20年代前半) 戦争体験・極限状況における人間
第三の新人 昭和20年代後半以降 日常生活・私小説的な心理描写

戦後派——戦争体験と極限状況

戦後派は、終戦直後に登場した作家群で、自らの戦争体験や、戦争がもたらした極限状況における人間の姿を、重厚な筆致で描き出しました。

野間宏は、軍隊内部の非人間的な組織のあり方を描いた**『真空地帯』で知られます。大岡昇平は、自身のフィリピン戦線での捕虜体験をもとにした『俘虜記(ふりょき)』、そして極限状況に置かれた兵士の姿を描いた『野火』**で、戦争文学の代表的な書き手として高く評価されています。

なお、三島由紀夫は、これらの戦後派とほぼ同時期に登場し、その端正で華麗な文体と、独自の美意識で知られる作家です。出家した少年僧が金閣寺への複雑な思いから放火に至る過程を描いた**『金閣寺』、自身の少年期・青年期を虚実織り交ぜて描いた『仮面の告白』**などの代表作があり、戦後派と並べて語られることも多い一方、その耽美的・観念的な作風から、独自の位置を占める作家として個別に扱われることもあります。

第三の新人——日常性への回帰

戦後派がやや観念的・重厚なテーマを扱ったのに対し、昭和20年代後半になると、より日常生活に密着した題材を、身近な視点から描く作家群が登場します。これが「第三の新人」と呼ばれるグループです。

遠藤周作は、江戸時代のキリシタン弾圧を題材に、信仰と苦難という重いテーマを描いた**『沈黙』**で知られます。このほか、安岡章太郎吉行淳之介庄野潤三らも、第三の新人を代表する作家として挙げられます。彼らの作品は、戦後派の重厚さとは対照的に、家庭や日常生活の中の心理の機微を、私小説的な手法で丁寧に描く点に特徴があります。

その後の展開——ノーベル文学賞と現代文学

戦後派・第三の新人に続く世代からは、国際的にも高く評価される作家が登場します。大江健三郎は、障害を持つ子どもの誕生と向き合う父親を描いた**『個人的な体験』などの作品で知られ、1994年に、川端康成に続いて日本人として2人目のノーベル文学賞**を受賞しました。川端康成の受賞(1968年)から数えて、日本人のノーベル文学賞受賞は、この時点で2例目ということになります。

現代文学では、村上春樹が、都会的な感性と喪失感を描いた**『ノルウェイの森』などの作品で国内外に幅広い読者を獲得し、国際的にも高く評価される現代日本文学の代表的な書き手として知られています。村上龍も、若者の退廃的な生活を鮮烈な文体で描いた『限りなく透明に近いブルー』**などで知られ、同時代を代表する作家の一人です。

まとめ

戦後〜現代文学は、「戦後派(戦争体験・重厚なテーマ)→第三の新人(日常性・私小説的手法)→大江健三郎ら(国際的評価・ノーベル賞)→村上春樹ら(現代の国際的な作家)」という大きな流れとして押さえておくと、時代順の整理がしやすくなります。

例題

例題1(基本)

問題

出家した少年僧が金閣寺への複雑な思いから放火に至る過程を描いた小説『金閣寺』の作者は誰か答えよ。

解答・解説を見る

『金閣寺』の作者は三島由紀夫です。三島は、端正で華麗な文体と独自の美意識で知られる作家で、自身の少年期・青年期を虚実織り交ぜて描いた『仮面の告白』も代表作の一つです。終戦直後の戦後派とほぼ同時期に登場した作家ですが、その耽美的・観念的な作風から、独自の位置を占める作家として扱われることも多い点をあわせて押さえておきましょう。

答え:三島由紀夫

例題2(標準)

問題

「戦後派」と「第三の新人」は、ともに戦後間もない時期に登場した作家群であるが、扱うテーマや作風に違いがある。その違いを説明し、それぞれの代表作家を1人ずつ挙げよ。

解答・解説を見る

戦後派は、終戦直後に登場し、自らの戦争体験や、戦争がもたらす極限状況における人間の姿を、重厚な筆致で描いた作家群です。代表的な作家として、大岡昇平(『俘虜記』『野火』)や野間宏が挙げられます。

第三の新人は、戦後派よりもやや遅れて登場し、戦争という大きなテーマよりも、家庭や日常生活の中の心理・人間関係を、私小説的な手法で丁寧に描いた作家群です。代表的な作家として、遠藤周作(『沈黙』)が挙げられます。

まとめると、戦後派は「戦争・極限状況・重厚さ」、第三の新人は「日常・私小説的手法・身近さ」という対比で整理できます。

答え:戦後派は戦争体験・極限状況を重厚に描く(代表:大岡昇平)。第三の新人は日常生活の心理を私小説的に描く(代表:遠藤周作)。

例題3(応用)

問題

次の説明にあてはまる作家名を答え、判断の根拠となった特徴を本文中の語句を用いて説明せよ。

「障害を持つ子どもの誕生と向き合う父親を描いた作品などで知られ、1994年に、川端康成に続いて日本人として2人目のノーベル文学賞を受賞した。」

解答・解説を見る

「1994年」「川端康成に続いて日本人として2人目のノーベル文学賞を受賞」という記述は、非常に特定的な事実であり、この条件にあてはまる人物は大江健三郎しかいません。川端康成の受賞が1968年であることとあわせて、2人の受賞者と受賞年を正確にセットで覚えておけば、確実に判断できます。

また「障害を持つ子どもの誕生と向き合う父親を描いた作品」という記述は、大江健三郎の代表作**『個人的な体験』**の内容と一致しており、この点からも作家を特定する裏づけになります。

答え:大江健三郎。「1994年」「川端康成に続く日本人2人目のノーベル文学賞受賞」という事実、および代表作『個人的な体験』の内容と一致することから判断できる。

確認問題

問題

『ノルウェイの森』などの作品で知られ、現代の日本文学を代表する国際的な作家として知られる人物は誰か答えよ。

答え

村上春樹