古典(古文) / 古文文法・用言の活用

古文の基礎知識(歴史的仮名遣い・古文の特徴)

要点整理

古文を読むとき、まず最初にぶつかる壁が「書いてある通りに読んでも、知っている単語に聞こえない」という問題です。これは、古文が現代とは異なる仮名遣い(歴史的仮名遣い)で書かれているためです。歴史的仮名遣いには、現代仮名遣いへの機械的な読み替えルールがあるので、まずこれを身につけましょう。

歴史的仮名遣いの5つの読み替えルール

ルール1: 語頭以外のハ行→ワ行

語の最初(語頭)にないハ行の仮名「は・ひ・ふ・へ・ほ」は、「わ・い・う・え・お」と読みます。これをハ行転呼音と呼びます。

  • 言(い) → いう
  • (川) → かわ
  • → おもい
  • ど → におえど

ただし、語の最初にあるハ行はそのままです(「花(はな)」は「はな」のまま)。

ルール2: ゐ・ゑ・を → い・え・お

現代仮名遣いにない「ゐ」「ゑ」「を」は、それぞれ「い」「え」「お」と読みます。

  • ゐ(率)る → いる
  • (声) → こえ
  • んな(女) → おんな

ルール3: ぢ・づ → じ・ず

「ぢ」「づ」は、それぞれ「じ」「ず」と読みます(現代語の「四つ仮名」の問題と対応する変化です)。

  • (先づ) → まず
  • (恥) → はじ

ルール4: くわ・ぐわ → か・が

もともと合拗音だった「くわ」「ぐわ」は、「か」「が」と読みます。

  • し(菓子の古い表記の一部などに見られる) → かし

ルール5: 母音の連続(あう・いう・えう)の長音化

漢字の音読みなどで「あう」「いう」「えう」という母音の連続が生じる場合、これらは長音(のばす音)に変化して読みます。

  • あう → おう(例: 「やうやう」→ようよう)
  • いう → ゆう(例: 「思ふ」の連用形「思ひ」+「て」ではなく、字音語の例:「兵衛(ひやうゑ)」→ひょうえ のような拗音化)
  • えう → よう(例: 「けふ」→きょう、「てふ」→ちょう)

このルールは主に漢字の音読みを仮名で書いた字音仮名遣いに関わるもので、5つの中では一番細かいルールです。まずはルール1・2・3(ハ行転呼音、ゐ・ゑ・を、ぢ・づ)を確実に押さえれば、古文の大部分は読めるようになります。

古文特有の表記・特徴

歴史的仮名遣い以外にも、古文の原文には現代の文章とは違う特徴がいくつかあります。教科書や問題集で読む古文は、読みやすいように後世の学者が手を加えたものであることを知っておきましょう。

  • 句読点がない:原文には「。」「、」がなく、すべて続けて書かれています。教科書の句読点は、後の研究者・編集者が読みやすさのために付けたものです。
  • 「」(かぎかっこ)がない:会話文であることを示す「」も後から付けられたものです。地の文と会話文の境目は、「と言ふ」「とて」などの言葉や文脈から自分で判断する必要があります。
  • 濁点がない:「か」と「が」、「た」と「だ」の区別が表記上されていないことが多く、文脈で判断します。
  • 主語・目的語がひんぱんに省略される:誰が・誰に対してその動作をしているかが、文中に明示されないことが非常に多いです。省略された主語は、敬語(誰に対して敬意を払っているか)や文脈から補って読む必要があります(この技術は「koten-dokkai」の単元で詳しく学びます)。
  • 人物名でなく身分・敬称で呼ばれる:「大納言」「中将」のように官職名で人物が呼ばれ、同一人物でも場面によって呼び方が変わることがあります。

これらの特徴があるからこそ、次のページから学ぶ動詞・助動詞の活用敬語の知識が、古文を正確に読むための頼りになります。歴史的仮名遣いは「読み方」の土台、活用・敬語は「意味・関係」を読み取る土台だと考えておきましょう。

例題

例題1(基本)

問題

次の歴史的仮名遣いを、現代仮名遣いに直しなさい。

(1) 言ふ (2) 匂ひ (3) をとこ (4) こゑ

解答・解説を見る

(1) 「言ふ」の「ふ」は語頭にないハ行の仮名なので、ルール1(ハ行転呼音)によりワ行の「う」に変わります。→ いう

(2) 「匂ひ」の「ひ」も語頭以外のハ行なので、同じくルール1により「い」に変わります。→ におい

(3) 「をとこ」の「を」は、ルール2により「お」に変わります。→ おとこ

(4) 「こゑ」の「ゑ」も、ルール2により「え」に変わります。→ こえ

答え:(1)いう (2)におい (3)おとこ (4)こえ

例題2(標準)

問題

次は『竹取物語』の冒頭部分である。傍線部「いふ」「ゐたり」を現代仮名遣いに直しなさい。

今は昔、竹取の翁といふもの、ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、さぬきの造となむいひける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり

解答・解説を見る

「いふ」は、まず動詞「言ふ」の一部です。語頭以外にあるハ行の仮名「ふ」なので、ルール1により「う」に変わります。→ いう

「ゐたり」の「ゐ」は、ルール2の対象です。「ゐ」→「い」と変わります。→ いたり(「ゐる」は「座っている・存在している」という意味の動詞で、その連用形「ゐ」に、存続の助動詞「たり」が付いた形です。)

答え:いふ→いう、ゐたり→いたり

このように、有名な古文作品の冒頭は、歴史的仮名遣いの練習に最適です。読めない単語に出会ったら、まず「語頭以外のハ行」「ゐ・ゑ・を」「ぢ・づ」の3つを疑ってみましょう。

例題3(応用)

問題

歴史的仮名遣い「けふ(今日)」が、現代仮名遣いでは「きょう」という拗音(小さい「ょ」を含む音)になる理由を、ルール5に基づいて説明しなさい。

解答・解説を見る

「けふ」を仮名のまま分解すると「け」+「ふ」です。ここでルール1(語頭以外のハ行→ワ行)を先に適用すると、「ふ」は「う」に変わるので、「けふ」は「けう」になります。

次に、「けう」の母音の並びに注目します。「け」の母音は e、「う」は u なので、「eu」という母音の連続が生じています。これはルール5の「えう→よう」のパターンに当てはまるので、「けう」全体が長音化して「きょう」と読まれるようになります。

このように、歴史的仮名遣いの読み替えは、ルール1(ハ行転呼音)を適用した結果、さらにルール5(母音の連続の長音化)が重なって起こることがあります。一度に全部を考えようとせず、まずハ行転呼音から順番に処理すると整理しやすくなります。

答え:「けふ」→(ハ行転呼音)→「けう」→(母音の連続 eu の長音化)→「きょう」

確認問題

問題

次の歴史的仮名遣いを、現代仮名遣いに直しなさい。

「うつくしうて」

答え

うつくしゅうて(「しう」の母音の連続 iu が、ルール5により「ゅう」という長音に変化します)