現代文 / 現代文の読み方の基本

評論文の構造を掴む(パラグラフリーディング)

要点整理

評論文はどう組み立てられているか

評論文(論説文)は、筆者が何らかの主張を、読者に納得してもらうために書く文章です。小説のように出来事の流れを追う文章とは違い、評論文は「主張」と、それを支える「論証」の組み合わせでできています。したがって評論文を読むときは、ストーリーを追うのではなく、「筆者は何を主張していて、それをどう証明しようとしているか」という論理の骨組みを追いかける必要があります。

この骨組みをつかむために有効なのが、段落ごとに「この段落はどんな役割を果たしているか」を意識しながら読み進める、パラグラフリーディングという読み方です。

段落が担う4つの代表的な役割

評論文の各段落は、多くの場合、次の4つのどれかの役割を担っています。

役割 特徴 よく使われる表現の例
問題提起 これから論じる話題・疑問を示す 「〜だろうか」「〜について考えてみたい」
具体例 抽象的な主張を分かりやすく示す 「たとえば」「実際に」「一例を挙げれば」
主張 筆者が最も伝えたい考え 「私は〜と考える」「〜べきである」「〜ではないだろうか」
まとめ それまでの内容を整理し直す 「このように」「以上見てきたように」「つまり」

1つの段落が必ずしも1つの役割だけとは限りませんが、まずはこの4分類を意識しながら、各段落に印(記号やメモ)をつけて読む練習をしましょう。特に、各段落の最初の1〜2文と最後の1文には、その段落の要点が置かれることが多いという点は覚えておくと効率的です。

パラグラフリーディングの手順

  1. 各形式段落の最初の1〜2文と、最後の1文に印をつける。
  2. 話題が変わった箇所(指示語や接続語によって新しい観点が導入される箇所)を見つけ、そこで意味段落の区切りを引く。
  3. 各意味段落に「問題提起」「具体例」「主張」「まとめ」のいずれかのラベルをつける。
  4. 全体を通して「問題提起 → 具体例による検討 → 主張 → まとめ」という大きな流れになっているかを確認する。

形式段落と意味段落

文章の見た目の上の区切りである形式段落と、内容のまとまりである意味段落は、必ずしも一致しません。たとえば「具体例」を述べる形式段落が2つ、3つと連続することもありますが、それらは内容の上では1つの意味段落(「具体例のブロック」)としてまとめて捉えるべきです。要約や大意を問う設問では、この意味段落の単位で文章全体を捉えられているかが問われます。

文章全体の構成パターン

評論文全体の構成にも、いくつかの典型的なパターンがあります。

  • 頭括型:最初の段落で主張を述べ、その後で具体例や理由によって説明していく型。
  • 尾括型:具体例や検討を積み重ねたうえで、最後の段落で主張をまとめる型。
  • 双括型:最初と最後の両方で同じ主張を述べ、間に具体例や検討を挟む型。評論文で最も多いパターンとされる。

「最初の段落と最後の段落を先に読み比べる」という時短の読み方は、この双括型の構成を前提にしたテクニックです。ただし、これはあくまで文章全体の主張をすばやくつかむための手がかりであり、間の段落(具体例や、反対意見への応答など)を読み飛ばしてよいという意味ではない点に注意しましょう。反論への応答部分にこそ、主張の説得力を支える重要な論理が置かれていることが多いからです。

例題

例題1(基本)

問題

次の文章の①〜④の各段落は、「問題提起」「具体例」「主張」「まとめ」のうちどれに当たるか、それぞれ答えよ。

①「対話とは何か」と問われると、多くの人は「意見を交換すること」だと答えるだろう。しかし、それだけでは対話と、単なる主張のぶつけ合いとの違いが説明できない。対話とは、いったいどのような営みなのだろうか。

②たとえば、会議の場で、Aさんが意見を述べ、Bさんがそれに反論し、Aさんがさらに反論する、という場面を考えてみよう。両者の主張がまったく変わらないまま終われば、それは「対話」ではなく、単に二つの独白がぶつかり合っただけである。

③私は、対話の本質は、相手の言葉によって自分の考えが少しでも変化する点にあると考える。相手の意見を聞いたあと、自分の最初の考えのままでは説明できない要素に気づき、自分の立場を修正したり、新しい視点を取り入れたりする。この「自分が変わる」プロセスこそが、対話を単なる主張の応酬から区別する条件なのである。

④このように、対話とは意見を交換する行為そのものではなく、その交換を通じて自分自身の考えが変化していく過程を指すのだと言える。

解答・解説を見る

各段落の最初・最後の一文に置かれた表現に注目します。

①は「対話とは、いったいどのような営みなのだろうか」という疑問形で終わっています。これから論じる話題を示しているので、問題提起です。

②は「たとえば」で始まり、会議での具体的な場面を挙げています。具体例です。

③は「私は〜と考える」という、筆者自身の考えを明言する表現で始まっています。主張です。

④は「このように」で始まり、それまでの内容を一文に整理し直しています。まとめです。

答え:①問題提起 ②具体例 ③主張 ④まとめ

例題2(標準)

問題

次の文章の②と③はそれぞれ独立した意味段落として数えるべきか、それとも1つの意味段落としてまとめるべきか、理由とともに答えよ。また、この文章全体はいくつの意味段落に分けられるか。

①私たちは、テクノロジーが生活を「便利」にしてきたと当然のように考えている。しかし、その便利さは、本当に手放しで喜べるものなのだろうか。

②たとえば、乗り換え案内アプリを使えば、迷うことなく最短ルートで目的地にたどり着ける。行き先までの経路を自分の頭で考える必要がなくなり、私たちはただアプリの指示に従うだけでよくなった。

③同じように、レシピ動画を見れば、手順や分量に迷うことなく料理を完成させることができる。素材の組み合わせや火加減を自分で試行錯誤する場面は、以前より格段に少なくなっている。

④これらの例からわかるのは、便利さの正体が、多くの場合「自分で試行錯誤する機会」を代わりに引き受けてもらうことだという点である。私たちは便利さと引き換えに、失敗しながら考える経験を手放しているのではないか。

⑤したがって、テクノロジーによる便利さを享受するときには、その裏で自分が何を失っているのかにも、意識的でありたい。

解答・解説を見る

まず②と③の役割を確認します。②は「たとえば」で始まり、乗り換え案内アプリの例を挙げています。③は「同じように」という並列を示す表現で始まり、レシピ動画という別の具体例を挙げています。

②と③は、どちらも「アプリや動画に頼ることで、自分で試行錯誤する機会が失われる」という同じ1つのポイントを支えるための、並列した具体例です。役割が同じで、内容の方向性も一貫しているため、形式段落としては2つでも、意味段落としては1つにまとめるべきです(「具体例のブロック」として扱う)。

これをふまえて全体を意味段落に分けると、①問題提起/②③(まとめて)具体例/④主張/⑤まとめ、となります。

答え:②と③は1つの意味段落にまとめるべき(どちらも同じ主張を支える並列の具体例のため)。文章全体は4つの意味段落に分けられる。

例題3(応用)

問題

次の文章の構成は、頭括型・尾括型・双括型のうちどれに当たるか。理由も含めて答えよ。

①ある企業の会議で、新しい商品名の候補について議論になった。若手社員は語感の良さを重視し、ベテラン社員は競合他社との違いを重視し、両者はしばらく平行線をたどった。

②議論の途中、ひとりの社員が「そもそも、この商品を誰に、どんな場面で使ってほしいのか」という問いを投げかけた。この問いをきっかけに、参加者は語感や差別化そのものではなく、想定する使用者の姿を具体的に思い描き始めた。

③その結果、当初の「語感か、差別化か」という対立は解消され、想定する使用者にとって自然に感じられる名前はどちらか、という新しい基準で議論がまとまっていった。

④この事例が示しているのは、対立する意見のどちらが優れているかを決めようとするだけでは、議論は前に進まないということである。対立そのものを一段上から見直す新しい問いが提示されたとき、初めて対話は前進する。

解答・解説を見る

まず、筆者の主張(最も抽象度の高い、まとめの一文)がどこにあるかを探します。①〜③はすべて、ある会議での出来事を時系列で説明した、1つの具体的な事例(エピソード)にすぎません。筆者自身の考えとして一般化された主張は、④の「対立そのものを一段上から見直す新しい問いが提示されたとき、初めて対話は前進する」という一文にしか現れていません。

最初の段落①には、主張らしき一般論は書かれておらず、具体的な事例の説明から文章が始まっています。したがって、最初と最後の両方に主張がある双括型ではなく、具体例を積み重ねたうえで最後に主張をまとめる尾括型だと判断できます。

答え:尾括型。①〜③は1つの具体的事例の説明に費やされており、筆者の主張は最後の④段落に初めて明示されているため。

確認問題

問題

次の文章全体の構成は、頭括型・尾括型・双括型のうちどれに当たるか、簡潔に答えよ。

①多様性を重んじる社会が望ましいということに、異論を唱える人は少ないだろう。しかし、私たちは「多様性」という言葉を、都合よく使い分けてはいないだろうか。

②たとえば、ある集団の中で少数派の意見が、単に「多様な意見の一つ」として聞き置かれるだけで、実際の意思決定にはまったく反映されない、という場面をしばしば目にする。

③このとき、多様性という言葉は、異なる意見を実際に取り入れる努力を怠るための、体のよい言い訳として機能してしまっている。

④真に多様性を尊重するとは、異なる意見を「存在すること」として認めるだけでなく、それによって自分たちの決定を実際に変えうる余地を持つことである。

答え

尾括型(①〜③は問題提起と具体例で、筆者の主張は④に初めて明示されているため)。