古典(古文) / 助詞・敬語
係助詞と係り結び
要点整理
係助詞とは
係助詞は、文中の語に付いて、その語を取り立てて強調する助詞です。「は・も・ぞ・なむ(なん)・や・か・こそ」の7つがあります。このうち「は」と「も」は文末の形に影響を与えませんが、「ぞ・なむ・や・か・こそ」の5つは、文末(結び)の活用形を変化させるという特別な働きを持ちます。これを**係り結び(係り結びの法則)**と呼びます。
係り結びの法則
古文の文は、本来なら終止形で終わります。しかし、文中に「ぞ・なむ・や・か・こそ」のどれかがあると、文末は終止形ではなく、決められた活用形になります。
- ぞ・なむ・や・か → 結びは連体形
- こそ → 結びは已然形
意味の面では、「ぞ・なむ」は強意(訳す必要はなく、強調のニュアンスを添えるだけ)、「や・か」は疑問・反語、「こそ」は強意を表します。
具体例で確認しましょう。伊勢物語の冒頭は本来「昔、男ありけり。」(終止形「けり」)ですが、これに「なむ」を加えて「昔、男なむありける。」とすると、文末が終止形「けり」から連体形「ける」に変化します。同じように「昔、男ぞありける。」も連体形結びです。一方、「花こそ美しけれ。」では、形容詞「美し」の已然形「美しけれ」で結ばれています(「美し」の活用は、未然:しから、連用:しく/しかり、終止:し、連体:しき、已然:しけれ、命令:しかれ、というク活用です)。
疑問と反語の見分け方
「や」「か」は、疑問と反語のどちらの意味にもなります。見分けるには、その文を「〜か。」とそのまま疑問文として読んで意味が通るかを確認します。
- 疑問:「いづれの山か天に近き。」(どの山が天に近いか)→ 単純に「どれだろう」と問うている。
- 反語:形は疑問文でも、答えが明白で、実質は強い否定の主張になっている場合。たとえば「かかる恐ろしきこと、世にあらんや。」は、表面上は「このような恐ろしいことが世の中にあるだろうか」という疑問の形ですが、実際には「そんなことがあるはずがない」という強い否定を表しています。この場合は「〜か、いや、〜ない」と訳すのが反語です。
反語かどうか迷ったら、「その文を疑問文のまま素直に読んで、話の流れとして違和感がないか」を確認しましょう。話し手が明らかに答えを知っている、あるいは強く否定したい内容を疑問の形で述べている場合は、ほぼ反語です。
結びの省略と結びの流れ
係り結びには、応用として2つの例外的な現象があります。
結びの省略:「ぞ」「なむ」などの後に続くはずの結びの語が、文脈から明らかなために省略されることがあります。特に「〜にや。」「〜にこそ。」のように、係助詞の後で文が終わっている場合、「あらむ」「あらめ」などの結びが省略されていると考えます。
結びの流れ(結びの消滅):係助詞を含む文節の後に、さらに文が続く(接続助詞などで下に文がつながる)場合、本来なら連体形・已然形で結ばれるはずの語が、その活用形のまま終わらずに、さらに活用して次に続くことがあります。この場合、表面上は係り結びが実現していないように見えますが、これは文法違反ではなく、「結びが下に流れていった」現象として説明されます。
例題
例題1(基本)
問題
次の文の( )に入る、係り結びとして正しい活用形の語を答えよ。
「今は昔、竹取の翁といふ者ぞあり( )。」※動詞は「けり」を用いること。
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係助詞「ぞ」があるので、結びは連体形になります。過去の助動詞「けり」の連体形は「ける」です。
答え:ける
例題2(標準)
問題
次の2つの文について、傍線部の「や」「か」が疑問・反語のどちらかを判定せよ。
(1)「いかなる所にか、この木はさぶらひけむ。」 (2)「かばかりの家、みな人の心にかなふやうにつくれる、能なき人のわざなりや。」の前段で、筆者が「これほど無用な出費があろうか、いや、あるはずがない」という趣旨を述べたあとの一節「これをまことしく思はん人かはあらん。」
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(1)について
「どのような所にございましたのだろうか」と、木があった場所を素直に尋ねている文です。答えを断定できず、純粋に知りたい内容を問うています。
判定:疑問
(2)について
「これを本当だと思う人があろうか」という形をしていますが、直前で筆者は「そんな無用な出費は愚かなことだ」という否定的な立場をすでに示しています。この流れの中で「まことしく思はん人かはあらん」と述べるのは、「そんな話を本気にする人がいるだろうか、いや、いるはずがない」という強い否定の主張です。
判定:反語
答え:(1)疑問/(2)反語
例題3(応用)
問題
次の文について、①係り結びが実現している箇所を指摘し、②文中に見られる「結びの流れ」にあたる部分があれば指摘せよ。
「かの大納言なむ、いみじく心にくく、ものし給ひけるに、この頃わづらひ給ふと聞きて、いとほしくおぼゆ。」
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①係り結びの確認
「なむ」があるので、本来なら結びは連体形になるはずです。実際に「ものし給ひける」の「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形になっており、係り結びが成立しています。
②結びの流れの確認
ただし、この文はここで終わらず、直後に接続助詞「に」が続いて「ものし給ひけるに、この頃わづらひ給ふと聞きて」と文がさらに続いています。もし係り結びの結果として文が完全に終止していたなら「ものし給ひける。」で切れるはずですが、実際には接続助詞「に」を伴ってさらに下に続いています。これは、連体形「ける」で結ばれたところまでは係り結びのルール通りですが、そこで文が完結せずに続いていく、という結びの流れの一種と考えることができます(結びの活用形自体は連体形のまま実現しているため、狭い意味では「結びの省略」ではなく、文が続く形で結びが機能している例です)。
答え:①「なむ」に対して「ける」(連体形)が結びとして実現している/②「ける」の後に接続助詞「に」を伴ってさらに文が続いており、結びのあとに文が流れていく形になっている
確認問題
問題
「うれしくもあるかな」という感動を表す一文について、もしこれを「うれしくこそあれ」と係助詞「こそ」を使って書き換えるとき、「あれ」はラ変動詞「あり」のどの活用形か答えよ。
答え
已然形(「こそ」の結びは已然形になるため)