現代文 / 設問対応の技術
選択肢問題の消去法
要点整理
なぜ消去法が有効なのか
現代文の選択肢問題では、正解の選択肢は本文の内容を過不足なく反映していますが、誤答の選択肢もでたらめに作られているわけではありません。多くの誤答選択肢は、本文の内容に似せて、しかしどこか1点だけ本文とズレるように巧妙に作られています。
このズレのパターンにはいくつかの「型」があります。型を知っていれば、選択肢を読んだときに「これは典型的な誤答のパターンだ」と機械的に見抜けるようになり、正解を直接探すよりもずっと確実に、選択肢を絞り込めます。
誤答選択肢の代表的な5つのパターン
| パターン | 特徴 |
|---|---|
| 言い過ぎ(過剰一般化) | 「すべて」「必ず」「〜しかない」など、本文の程度を超えて断定している |
| 本文にない情報の追加 | 一見もっともらしいが、本文のどこにも根拠がない要素が混ざっている |
| 因果の逆転 | 本文の原因と結果、あるいは前提と結論を入れ替えている |
| 対比の取り違え | 筆者が否定しているA側の内容を、あたかも筆者の主張であるかのように述べている |
| 話題のすり替え | 本文の別の箇所(違う段落・違う話題)の内容を混ぜ込み、傍線部の内容とはズレた話にしている |
消去法の手順
- 選択肢を読む前に、傍線部の内容を自分の言葉である程度要約し、「たぶんこういう内容の選択肢が正解のはずだ」という見当をつける。
- 各選択肢を本文と照合しながら、上記5つのパターンのどれかに当てはまらないかを確認する。
- 明らかにパターンに該当するものから、順に消していく。
- 最後まで2つの選択肢で迷う場合は、本文の表現(特に程度を表す言葉や、因果関係を示す言葉)と、より細かく正確に対応している方を選ぶ。
自分で答えを決め打ちしてから選択肢を探すのではなく、あくまで選択肢の側に、本文とのズレがないかを検証するという受け身の姿勢で臨むことが、消去法を機能させるコツです。
「言い過ぎ」を見抜くコツ
本文では「〜することが多い」「〜と言えるだろう」のように、含みを持たせた書き方がされているのに、選択肢では「〜である」「〜しかない」「すべて〜だ」のように、断定の度合いが強められていることがあります。本文の程度を表す言葉(多くの場合、大抵、〜こともある、など)と、選択肢の断定の強さを、常に照らし合わせる習慣をつけましょう。
「本文にない情報」を見抜くコツ
選択肢の中の一部の要素について、「これは本文のどこに書いてあっただろうか」と自問し、本文中に対応する記述を実際に指させるかどうかを確認します。もっともらしく聞こえるが本文に根拠を示せない要素が1つでもあれば、その選択肢は消去の対象です。
例題
例題1(基本)
問題
次の文章の傍線部「彼のやり方は、多くの反発を招いた」について、その説明として最も適切なものを、後の選択肢から選べ。
新任のリーダーは、これまでの手順を大きく見直し、効率を優先した新しいやり方を導入した。しかし、彼のやり方は、多くの反発を招いた。長年その手順に慣れ親しんできた古参のメンバーにとって、急な変更はついていくのが難しく、戸惑いを覚えさせるものだったからだ。
① 新しいやり方は非効率であり、誰もが反発したから。 ② 古参のメンバーは、新しいやり方の内容に一切理解を示さなかったから。 ③ 急な変更が、長年慣れ親しんだ手順を持つ古参のメンバーを戸惑わせたから。 ④ リーダーが、古参のメンバーの意見を最初から聞くつもりがなかったから。
解答・解説を見る
①は「非効率であり」という部分が本文のどこにも書かれておらず、むしろ本文では「効率を優先した」やり方だとされています。本文の内容と正反対の要素が混ざった、本文にない情報の追加です。
②は「一切理解を示さなかった」という部分が、本文の「ついていくのが難しく、戸惑いを覚えさせるものだった」という記述より強い、言い過ぎの表現になっています。
④は、リーダーが「古参のメンバーの意見を聞くつもりがなかった」という記述が本文のどこにもなく、本文にない情報の追加です。
③は、本文の「長年その手順に慣れ親しんできた古参のメンバーにとって、急な変更はついていくのが難しく、戸惑いを覚えさせるものだった」という内容と、過不足なく対応しています。
答え:③
例題2(標準)
問題
次の文章の主旨として最も適切なものを、後の選択肢から選べ。
これまで、専門家の知識は、素人には理解できない特別なものだと考えられてきた。しかし、専門家自身が、自分の考えを分かりやすい言葉に「翻訳」する努力を怠っているだけの場合も少なくない。真に優れた専門家とは、難解な専門用語を使いこなす人ではなく、複雑な内容を、相手に応じた言葉で説明し直せる人のことではないだろうか。
① 専門知識は誰にでも簡単に理解できるものであり、難しく感じるのは専門家の怠慢が原因である。 ② 専門家は、専門用語を一切使うべきではない。 ③ 優れた専門家とは、複雑な内容を相手に応じた言葉で説明し直せる人のことである。 ④ 専門家の知識が特別なものだという考え方は、今も昔も変わらず正しい。
解答・解説を見る
①は「誰にでも簡単に理解できる」という言い過ぎと、「難しく感じるのはすべて専門家の怠慢が原因である」という言い過ぎが重なっています。本文は「怠っている場合も少なくない」と述べているだけで、すべての原因を専門家の怠慢に帰しているわけではありません。
②は「一切使うべきではない」という言い過ぎです。本文は「難解な専門用語を使いこなす人ではなく」と述べているだけで、専門用語の使用そのものを全面的に禁止しているわけではありません。
④は、この文章がまさに「しかし」以降で否定しようとしている、A(旧来の考え)をそのまま正しいとしてしまっている、対比の取り違えです。
③は、本文の最後の一文「複雑な内容を、相手に応じた言葉で説明し直せる人のことではないだろうか」と、過不足なく対応しています。
答え:③
例題3(応用)
問題
次の文章の傍線部「その成功は、幸運のおかげではない」について、最も適切な説明を、後の選択肢から選べ。
彼女の事業が軌道に乗ったのは、たまたま良いタイミングに恵まれたからだと言われることが多い。しかし、その成功は、幸運のおかげではない。彼女は、うまくいかなかった過去の3つの事業から、失敗の原因を丁寧に分析し、次の事業に生かしていた。良いタイミングに見えた瞬間も、実際にはその積み重ねの先に用意されていたものだったのである。
① 彼女は運に頼らず、常に完璧な計画のもとで事業を進めていたから。 ② 彼女の成功は、過去の失敗の分析を積み重ねてきた結果として訪れたものだったから。 ③ 良いタイミングに恵まれたことが、彼女の成功の唯一の理由だったから。 ④ 周囲が彼女の成功を、幸運のおかげだと誤解していたことが、かえって彼女の評価を高めたから。
解答・解説を見る
①は「常に完璧な計画のもとで」という部分が言い過ぎです。本文にあるのは「失敗から原因を分析し、次に生かした」という記述であり、「完璧な計画」という強い表現には対応していません。
③は、本文がまさに否定している「幸運のおかげ」という内容を、そのまま唯一の理由としてしまっており、対比の取り違え(傍線部の主張と正反対)です。
④は「周囲の誤解が彼女の評価を高めた」という、本文のどこにも書かれていない、話題のすり替えです。傍線部が説明しようとしているのは「成功の実際の理由」であり、「周囲の評価」の話にすり替わってしまっています。
②は、本文の「過去の3つの事業から、失敗の原因を丁寧に分析し、次の事業に生かしていた」「良いタイミングに見えた瞬間も、実際にはその積み重ねの先に用意されていたものだった」という内容と、過不足なく対応しています。
答え:②
確認問題
問題
次の文章の内容と合致するものとして最も適切なものを、後の選択肢から選べ。
このチームが成果を上げられたのは、個々のメンバーの能力が特別に高かったからではない。むしろ、互いの弱点を素直に共有し、それを補い合う関係を築けていたことが大きい。
① チームの成果は、メンバー個々の能力の高さによってのみ決まる。 ② メンバーが互いの弱点を共有し補い合えたことが、成果につながった。 ③ 弱点を共有することは、チームの成果にとって無意味である。 ④ このチームには、特別に能力の高いメンバーが1人もいなかった。
答え
②(①は本文が否定する内容の言い過ぎ、③④は本文にない情報の追加)