現代文 / 小説読解
小説の設問パターン
要点整理
小説の設問は3つのパターンに整理できる
小説の設問は、問い方の表現こそさまざまですが、実際には次の3つのパターンのいずれかに分類できます。設問文を読んだ瞬間に「これはどのパターンか」を見抜くことが、時間内に的確な答案を作る第一歩です。
- 心情説明問題:登場人物のある時点での心情、あるいは心情の変化を説明させる問題(最も出題頻度が高い)
- 表現技法問題:比喩や擬人法などの表現技法を指摘させたり、その技法の効果を説明させたりする問題
- 場面把握問題:「いつ」「どこで」「誰が」「何が起きたか」という物語の状況そのものを問う問題
パターン①:心情説明問題の解き方
心情説明問題は、これまでのトピックで学んだ手がかり(心情語、表情・しぐさなどの間接描写、行動・セリフ、情景描写)を総動員して解きます。選択肢問題であれば、各選択肢が「本文中のどの描写を根拠にしているか」を確認しながら消去法で絞り込みます。記述問題であれば、「(きっかけとなる出来事)によって、(変化前の心情)から(変化後の心情)へと変わった」という骨組みを基本に、字数に応じて要素を調整します。
パターン②:表現技法問題の解き方
表現技法問題では、まず技法そのものを見抜く力と、その技法が生んでいる効果を説明する力の両方が必要です。代表的な表現技法を整理しておきましょう。
| 表現技法 | 特徴・具体例 | 主な効果 |
|---|---|---|
| 直喩 | 「 |
イメージを具体的・鮮明にする |
| 隠喩(暗喩) | 「~のように」を使わず、直接たとえる(例:「彼の心は氷だった」) | 直喩より強く、断定的な印象を与える |
| 擬人法 | 人間でないものを、人間のように表現する(例:「風が笑う」) | 対象に生命感・親しみやすさを与える |
| 体言止め | 文末を名詞(体言)で終える | 余韻を残す、印象を強く残す |
| 倒置法 | 通常の語順を入れ替える | 強調したい語句を際立たせる |
| 反復法 | 同じ語句・表現を繰り返す | 強調、リズム感を生む |
| 対句 | 対になる語句・構造を並べる | リズム、対照的な内容を印象づける |
| 象徴 | 具体的なものに、抽象的な意味を託す(例:「消えていく雪」で儚さを表す) | 直接語らずに、テーマや心情を暗示する |
効果を説明する設問に答えるときのコツは、「この技法によって、何が強調され、読者にどのような印象を与えているか」という視点で考えることです。単に「比喩が使われている」で終わらせず、「(たとえられているもの)を(たとえに使われているもの)にたとえることで、(強調される内容・印象)を効果的に伝えている」という形で言語化する練習をしましょう。
パターン③:場面把握問題の解き方
場面把握問題では、物語を「時」「場所」「登場人物」「出来事」という要素に分解して整理する力が問われます。とくに、場面が転換する箇所(時間や場所が変わる箇所)を正確に把握できるかがポイントです。
場面の転換は、次のようなサインで示されることが多いです。
- 「翌朝」「数年後」「その日の夜」のような、時間の経過を示す語句
- 「教室を出ると」「駅に着くと」のような、場所の移動を示す語句
- 段落の変わり目や、本文中の空白行
- 会話文から地の文への切り替わり(場面説明への戻り)
場面把握問題には、出来事を時系列に並べ替えさせる問題、ある時点での登場人物の位置関係を問う問題、そして視点人物(その場面が誰の目線・内面を通して語られているか)を問う問題などがあります。視点人物を特定するには、地の文が「誰の心の中にまで踏み込んで描写しているか」に注目します。ある人物の心情だけが直接描写され、他の人物の心情は表情や言葉からしか推測できない場合、その人物が視点人物である可能性が高いといえます。
例題
例題1(基本)
問題
次の一文について、傍線部に用いられている表現技法として最も適当なものを、後の①~④のうちから一つ選べ。
教室の窓の外で、木々のざわめきが、まるで生徒たちの噂話に相槌を打っているかのようだった。
① 体言止め ② 擬人法 ③ 反復法 ④ 対句
解答・解説を見る
まず表現技法の見分け方を確認します。この一文では、「木々のざわめき」という、人間ではないものが、「相槌を打っているかのようだ」という、人間の行動として表現されています。人間でないものを人間のように表現する技法は擬人法です。
この表現によって、木々のざわめきという自然現象が、まるで生徒たちの会話に興味を持って参加しているかのような、親しみやすく、生き生きとした印象を与える効果が生まれています。①体言止めは文末を名詞で終える技法ですが、この文は「~だった」で終わっており該当しません。③反復法、④対句のような、語句や構造の繰り返し・対応も、この一文には見られません。
答え:②
例題2(標準)
問題
次の文章を読んで、後の問いに答えよ。
放課後、健と亮太は部室で明日の試合の作戦を話し合っていた。 「そういえば、来週の合宿の件だけど」と亮太が切り出した。 二人が部室を出ると、外はすでに暗くなっていた。 翌朝、健は誰よりも早くグラウンドに来て、一人で素振りを続けていた。
この文章には、場面の転換が何箇所あるか。最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 0箇所(場面は転換していない) ② 1箇所 ③ 2箇所 ④ 3箇所
解答・解説を見る
場面把握問題では、時間・場所の変化を示す語句を手がかりに、場面の切れ目を数えます。
まず「放課後」「部室」で始まる最初の場面があります。この中では健と亮太が作戦や合宿について話しており、時間・場所の変化はまだありません。
次に「二人が部室を出ると、外はすでに暗くなっていた」という一文があります。「部室を出る」という場所の移動があるため、ここで1回目の場面転換が起きています(部室の中 → 部室の外)。
さらに「翌朝、健は誰よりも早くグラウンドに来て」という一文があります。「翌朝」という時間の経過と、「グラウンド」という場所の変化が同時に起きているため、ここで2回目の場面転換が起きています。
したがって、場面の転換は合計2箇所です。「部室を出る」場面と「翌朝のグラウンド」の場面を同じ場面だと見なしてしまうと数え間違えるので、時間・場所どちらか一方でも変化していれば場面転換としてカウントする、という基準を意識しましょう。
答え:③
例題3(応用)
問題
次の文章を読んで、後の問いに答えよ。
卒業アルバムの受け渡しが終わり、教室にはまだ数人が残っていた。窓の外では、桜の花びらが一枚、また一枚と、音もなく舞い落ちていく。 「なあ」と隼人が言った。「もっと早く、お前に話しかけておけばよかったな」 颯太は隼人の顔を見た。三年間、ろくに口を利いたこともない相手からの、思いがけない言葉だった。颯太は少し間を置いてから、静かに答えた。「今からでも、遅くないだろ」 桜の花びらが、また一枚、机の上に落ちた。
次の(1)・(2)の問いに答えよ。
(1) 傍線部「桜の花びらが一枚、また一枚と、音もなく舞い落ちていく」という情景描写が、この場面全体に対して持つ効果として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。
① 卒業という別れの場面に漂う、静かで穏やかな余韻を演出している。 ② 颯太の怒りの感情を暗示している。 ③ 隼人の発言が場違いであることを強調している。 ④ 場面が過去の回想であることを示している。
(2) この場面は、主に誰の視点(内面)を通して語られているか。本文中の描写を根拠に、20字程度で説明せよ。
解答・解説を見る
(1)について
情景描写の役割を考える問題です。「桜の花びら」「音もなく舞い落ちていく」という描写は、卒業という一つの区切り・別れの場面にふさわしい、静かで穏やかな雰囲気を作り出しています。冒頭とラスト(「桜の花びらが、また一枚、机の上に落ちた」)の両方に桜の描写が置かれ、隼人と颯太のやり取りを、静かに包み込むような効果を持たせています。②「怒り」、③「場違いさの強調」、④「回想」は、いずれも本文の落ち着いた雰囲気や内容と矛盾するため誤りです。
(1)の答え:①
(2)について
視点人物を特定するには、地の文が誰の内面にまで踏み込んでいるかを確認します。本文を見ると、「颯太は隼人の顔を見た。三年間、ろくに口を利いたこともない相手からの、思いがけない言葉だった」というように、**颯太が何を感じたか(思いがけない言葉だと感じたこと)**が地の文で直接説明されています。一方、隼人については、セリフと行動(「なあ」と言った、という発言)は描かれていますが、隼人の内面(どう感じているか)を直接説明する地の文はありません。
このように、一方の人物の内面だけが地の文で描写されている場合、その人物が視点人物だと判断できます。
(2)の答え:(例)颯太の内面(心情)を通して語られている。(隼人の言葉を「思いがけない」と感じる颯太の心情が地の文で直接描かれているため。)
確認問題
問題
次の一文について、傍線部に用いられている表現技法の名称を答え、あわせてその効果を20字程度で説明せよ。
別れ際、彼女はただ一言、「さようなら」。
答え
(例)体言止め。文末を名詞で止めることで、別れの一言の余韻を強く印象づけている。