漢文 / 重要句法

詠嘆形・限定形

要点整理

詠嘆形:文末の「哉」

漢文の詠嘆(感動・驚きを込めた言い方)は、文末に置かれるによって表されることがよくあります。「哉」は「かな」と読み、「なんと〜であることよ」という気持ちを込めます。

主語や述語の順番が入れ替わり、述語(感動の中心になる形容詞など)が先に来る形をとることも多く、これも詠嘆らしさを強めています。

詠嘆形:「豈〜哉」

(あに)は、次のトピック(疑問形・反語形)で学んだように、多くの場合反語(「どうして〜か、いや〜ない」)を作る字ですが、文末が「哉」で結ばれる「豈〜哉」の形は、反語の意味に加えて、強い感動・詠嘆のニュアンスも同時に帯びることがよくあります。

たとえば「豈不レ痛哉。」(あに痛ましからずや)は、形の上では反語(「どうして痛ましくないことがあろうか」)ですが、実質的には「なんと痛ましいことか」という詠嘆に近い強い感情を表しています。このように、反語形と詠嘆形は、はっきり分けられるものというよりも、重なり合うことが多いということを理解しておきましょう。

限定形:唯・独・徒・但+耳(のみ)

「ただ〜だけだ」という限定の意味は、唯・惟・独・徒・但などの字を文の初めに置き、文末に耳・爾・已・而已などを添えて「のみ」と読むことで表されます。

唯(ただ)A 耳(のみ)。 →「唯だAのみ。」(ただAだけだ)

唯・惟・独・徒・但は、どれもほぼ同じ「ただ」という意味で使われますが、だけは少し注意が必要です。独は限定の「ただ」の意味で使われる一方で、疑問形・反語形と組み合わさって「独り〜のみならんや」(ひとり〜だけであろうか、いやそれだけではない)のように使われることもあります。文脈によって、単純な限定なのか、反語を伴った限定的なニュアンスなのかを見極める必要があります。

例題

例題1(基本)

問題

次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。

賢 哉、回 也。

解答・解説を見る

返り点は付いておらず、文字の並び通りに読みます。「賢」を「賢なる」、「哉」を「かな」、「回」はそのまま人名、「也」は詠嘆を強める「や」と読みます。

答え:賢なるかな、回や。/ なんと(顔回は)賢いことだろうか。

これは『論語』にある、孔子が弟子の顔回(回)の人柄をほめたたえた、有名な一節です。ふつうなら「回賢なり」(回は賢い)という語順になるところを、「賢なるかな」を先頭に持ってくることで、詠嘆の気持ちを強めています。

例題2(標準)

問題

次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。また、この文が反語と詠嘆のどちらの性質を持つか説明せよ。

豈不レ痛哉。

解答・解説を見る

「豈」はそのまま「あに」と読みます。「痛」にレ点が付いているので、「痛」を先に読んでから「不」に返り、「痛ましからず」となります。「哉」はそのまま文末で「や」と読みます。

答え:あに痛ましからずや。/ なんと痛ましいことではないか。

形の上では「どうして痛ましくないことがあろうか、いや痛ましい」という反語の形をしていますが、実質的には「本当に痛ましいことだ」という強い感動を表す詠嘆としての働きをしています。「豈〜哉」は、このように反語と詠嘆の両方の性質をあわせ持つ、代表的な形です。

例題3(応用)

問題

次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。

但レ聞二 人 語 響一。

解答・解説を見る

「人」「語」「響」をそのままの順で読んでから、「聞」に返ります(一二点)。「但」はそのまま文の初めで「ただ」と読みます。

読む順は「但→人→語→響→聞」です。

答え:但だ人語の響くを聞く。/ ただ人の話し声が響くのが聞こえるだけだ。

これは、盛唐の詩人・王維の詩「鹿柴」の一節です。「空山人を見ず、但だ人語の響くを聞く」(人けのない山中で人の姿は見えず、ただ話し声の響きだけが聞こえてくる)と続く、静けさの中にかすかな物音だけが響く情景を詠んだ、有名な詩の一部です。

確認問題

問題

次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。

所レ好(ム)、唯 読書 耳。

答え

好む所は、唯だ読書のみ。/ 好きなものは、ただ読書だけだ。