古典(古文) / 助動詞
助動詞概論(意味・接続・活用の考え方)
要点整理
古文の助動詞は、種類が多く意味も多岐にわたるため、多くの高校生にとって古文最大の難関になります。しかし、闇雲に1つずつ丸暗記するのではなく、どの助動詞についても必ず3つの要素をセットで整理する、という一貫した方法をとれば、驚くほど整理しやすくなります。
助動詞を覚える3要素
①意味
その助動詞が、文にどんなニュアンスを付け加えるかです。打消・過去・完了・推量・断定・使役・受身・希望など、意味のグループによって助動詞は分類されます。1つの助動詞が複数の意味を持つ場合も多く(「べし」は6つの意味を持ちます)、その場合は文脈から意味を判定する力が必要になります。
②接続
その助動詞が、直前の語のどの活用形に付くかという決まりです。例えば、打消の助動詞「ず」は未然形に接続します(「書か+ず」)。接続のルールは、実は最も強力な手がかりです。同じ形をした助動詞(または助動詞の一部)が複数の候補として考えられるとき、直前の語がどの活用形になっているかを見れば、どちらの助動詞(あるいはどの意味の用法)なのかを一意に絞り込めることが多いからです。
③活用
助動詞自身が、6つの活用形(未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形)にどう変化するかです。ゼロから覚える必要はなく、これまでに学んだ動詞・形容詞・形容動詞の活用パターンに当てはめて「ラ変型」「四段型」「形容詞型」のように理解すれば、既存の知識を利用できます。
なぜ3要素セットで覚えるべきなのか
古文を読んでいて、ある1文字・1音節の形(たとえば「ぬ」や「なり」)にぶつかったとき、それが複数の異なる助動詞(または助動詞の異なる活用形)である可能性があります。このとき、接続(直前が何形か)を確認することで、候補を絞り込むことができます。
例えば「ぬ」という形だけを見ても、それが打消の助動詞「ず」の連体形なのか、完了の助動詞「ぬ」の終止形なのかは決まりません。しかし、直前の語が未然形なら打消の「ぬ」、連用形なら完了の「ぬ」と判定できます。この後の単元で学ぶ「なりの識別」「るる・らるるの識別」なども、すべてこの「接続で絞り込み、意味は文脈で判断する」という同じ考え方の応用です。
助動詞グループの全体像
これから7つのページに分けて学ぶ助動詞を、意味のグループごとに整理すると次のようになります。
| 意味のグループ | 助動詞 |
|---|---|
| 打消 | ず |
| 過去 | き・けり |
| 完了 | つ・ぬ・たり・り |
| 推量(1) | む・むず・べし |
| 推量(2) | らむ・けむ・まし・らし |
| 断定・存在 | なり・たり |
| 使役・受身・希望 | す・さす・る・らる・たし |
この表の並び順どおりに、次のページから1つずつ「意味・接続・活用」を確認していきます。それぞれの助動詞を覚えるときは、常にこの3要素を自分の言葉で説明できるかどうかを確認する習慣をつけましょう。
例題
例題1(基本)
問題
助動詞を覚えるときに整理すべき3つの要素を、それぞれ簡潔に説明しなさい。
解答・解説を見る
助動詞の学習で整理すべき3要素は、①意味(その助動詞が文に何のニュアンスを加えるか)、②接続(直前の語のどの活用形に付くか)、③活用(助動詞自身がどのパターンで活用するか)です。
このうち②の接続は、同じ形の助動詞・語を見分けるための最も実戦的な手がかりになるため、意味を考える前に、まず接続を確認する習慣をつけることが大切です。
答え:意味・接続・活用
例題2(標準)
問題
「花咲きぬ。」と「花咲かぬ。」という2つの文について、傍線部「ぬ」がそれぞれ別の助動詞であると考えられる理由を、接続の観点から説明しなさい。
解答・解説を見る
どちらも「ぬ」という同じ形をしていますが、直前の語の活用形が違います。
「咲き」は動詞「咲く」(四段活用)の連用形です。連用形に接続する「ぬ」は、完了の助動詞「ぬ」です。
「咲か」は動詞「咲く」の未然形です。未然形に接続する「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形(「ず」の活用表:ず・ざり・ず・ぬ・ね・○のうち連体形)です。
このように、同じ「ぬ」という形でも、直前が連用形なら完了、未然形なら打消(の連体形)と、接続によって全く別の助動詞だと判定できます。
答え:「花咲きぬ」の「ぬ」は連用形に接続する完了の助動詞「ぬ」、「花咲かぬ」の「ぬ」は未然形に接続する打消の助動詞「ず」の連体形であり、直前の活用形が異なるため。
例題3(応用)
問題
助動詞の活用を「ラ変型」「四段型」のように、既存の活用のパターンに当てはめて理解する利点を説明しなさい。
解答・解説を見る
助動詞は種類が多く、それぞれが独自の活用表を持っているように見えますが、実際にはそのほとんどが、これまでに学んだ動詞・形容詞・形容動詞の活用パターン(四段型・ラ変型・下二段型・形容詞型など)のどれかと同じ規則で変化します。
つまり、助動詞ごとにゼロから活用表を丸暗記する必要はなく、「この助動詞はラ変型だから、あり(あら・あり・あり・ある・あれ・あれ)と同じパターンで、語幹部分だけが違う」というように、既に覚えている知識に当てはめて理解できます。これにより、暗記の負担が大きく減り、活用形どうしの見分け方(たとえば「終止形と連体形が同じ形か違う形か」)も、動詞のときと同じ理屈で判断できるようになります。
答え:助動詞ごとに個別の活用を丸暗記するのではなく、既習の動詞・形容詞の活用パターンに当てはめることで、暗記量を減らし、活用形の識別も既存の知識で応用できるようになる。
確認問題
問題
助動詞の意味を正しく判定するために、意味を考える前にまず確認すべき要素は何か。
答え
接続(直前の語がどの活用形になっているか)