古典(古文) / 助動詞
断定・存在の助動詞(なり・たり)
要点整理
このページでは、断定(~である)や存在を表す「なり」「たり」を学びます。「なり」は形が同じでも意味・接続が異なる2種類があるため、識別方法をしっかり押さえましょう。
断定の「なり」
断定の「なり」は、体言(名詞)や連体形に接続し、形容動詞のナリ活用と同じパターンで活用します。
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| なら | に(なり) | なり | なる | なれ | なれ |
意味は「である」という断定が基本です(まれに「にいる、にある」という所在・存在の意味になることもあります)。「これは花なり。」のように、体言に直接付いて「だ」と言い切る形でよく使われます。
伝聞・推定の「なり」
もう1つの「なり」は、終止形に接続します(ラ変・ラ変型活用語には連体形接続)。活用はラ変と同じパターン(ラ変型)ですが、未然形・命令形は使われません。
| 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 |
|---|---|---|---|
| (なり) | なり | なる | なれ |
意味は伝聞(ということだ、だそうだ、人づてに聞いた情報)と推定(~ようだ、音を根拠にした推量)の2つです。「隣の部屋にて人の声すなり。」(隣の部屋で人の声がするようだ)のように、聞こえてきた音を根拠に推し量ったり、噂として伝え聞いたことを述べたりするときに使われます。
「なり」の識別:断定か、伝聞推定か
同じ「なり」という形でも、断定と伝聞推定では接続がはっきり異なります。これが最大の識別の手がかりです。
- 体言、または連体形に接続している → 断定の「なり」
- 終止形に接続している → 伝聞推定の「なり」
例えば「花なり。」の「なり」は体言「花」に接続しているので断定、「花咲くなり。」の「なり」は終止形「咲く」に接続しているので伝聞推定、と判定できます。
ただし、ここには落とし穴があります。ラ変動詞やラ変型に活用する語(形容詞のカリ活用や、断定の「なり」自体など)には、どちらの「なり」も連体形に接続するという共通の例外があるため、接続だけでは区別がつかなくなります。この場合は、意味から判断するしかありません。「あり」+「なり」の場合、「あるなり」が「である」(断定)なのか、「であるようだ・~であるということだ」(伝聞推定)なのかは、前後の文脈で判断する必要があります。
断定の「たり」
「たり」には、完了・存続の助動詞「たり」(前のページで学んだもの)とは別に、断定を表す「たり」があります。体言に接続し、活用は形容動詞のタリ活用と同じパターンです。
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| たら | と(たり) | たり | たる | たれ | たれ |
意味は「~である」という断定です。主に『平家物語』のような、漢文訓読調の文体(和漢混淆文)で、「勇者たり」のように使われます。完了・存続の「たり」との違いは接続で見分けます。完了・存続の「たり」は動詞の連用形に接続するのに対し、断定の「たり」は体言に接続します。
例題
例題1(基本)
問題
次の傍線部「なり」が、断定と伝聞推定のどちらかを、接続に注目して答えなさい。
「かの家の主は、いみじき歌よみなり。」
解答・解説を見る
「歌よみ」は体言(名詞)です。体言に接続する「なり」は断定の用法です。
答え:断定(あの家の主は、たいそう優れた歌人である)
例題2(標準)
問題
次の傍線部「なり」が、断定と伝聞推定のどちらかを、接続に注目して答え、意味も答えなさい。
「奥の方に、人の泣く声すなり。」
解答・解説を見る
直前の「す」は動詞「す」(サ変)の終止形です。終止形に接続する「なり」は伝聞推定の用法です。
この文では、実際に聞こえてきた「泣く声」という音を根拠にして「~のようだ」と推し量っているので、意味は推定と判断できます(誰かから伝え聞いた話ではなく、自分の耳で今聞いている音がもとになっているため)。
答え:伝聞推定(のうち推定)。奥の方で、人が泣いている声がするようだ。
例題3(応用)
問題
「この所に、いみじき歌よみありなり。」という文について、傍線部「ありなり」の「なり」の意味が断定・伝聞推定のどちらとも接続だけからは決められない理由を説明し、この文にふさわしい意味を答えなさい。
解答・解説を見る
「あり」はラ変動詞です。ラ変・ラ変型活用語には、断定の「なり」も伝聞推定の「なり」も、どちらも連体形(「ある」)に接続するという共通の例外があります。しかしこの文では「ありなり」と、連体形「ある」ではなく終止形と同じ「あり」の形になっています。
ここで思い出したいのは、ラ変の終止形と連体形は本来「あり」「ある」で異なる形だという点です。もし「なり」が断定(体言・連体形接続)なら「あるなり」となるはずですが、この文は「ありなり」、つまり終止形と同じ形に「なり」が接続しています。したがって、この「なり」は終止形に接続する伝聞推定の「なり」だと判定できます。
答え:この所に、優れた歌人がいるということだ(伝聞)。ラ変動詞は断定・伝聞推定どちらの「なり」も連体形に接続しうるため紛らわしいが、この文では終止形と同形の「あり」に接続しているので、伝聞推定と判断できる。
このように、ラ変(型)の語に「なり」が続く場合は、まず「終止形と連体形、どちらの形になっているか」を正確に見極めることが、識別の第一歩になります。
確認問題
問題
断定の「たり」と、完了・存続の「たり」を、接続の違いから見分ける方法を答えなさい。
答え
断定の「たり」は体言に接続し、完了・存続の「たり」は動詞の連用形に接続する。