漢文 / 重要句法

使役形

要点整理

使役動詞の種類

「〜に…させる」という使役の意味は、漢文では使役動詞+使役の対象(人)+動詞という形で表されます。文末近くで、助動詞「しム」(使む・令む)を補って読みます。

代表的な使役動詞には、次のようなものがあります。

使役動詞 ニュアンス
使 もっとも基本的な使役。「〜させる」
やや改まった言い方。「命じて〜させる」に近いニュアンス
「(人を)差し向けて)〜させる」というニュアンス
本来は「教える」の意味だが、使役として使われることもある

いずれの字も、読み方・書き下し方の基本パターンは同じです。

「〜ヲシテ…しム」の形

使役形の基本パターンは、次の通りです。

使役動詞 + [人]ヲシテ + [動詞]しム

書き下し文にするときは、使役の対象になる人に送り仮名「ヲシテ」を付け、文末近くの動詞に、平仮名の助動詞「しむ」を補います。使役動詞そのものは、この「しむ」に対応する部分として、文の最後(動詞のあと)まで返って読まれることになります。

たとえば「使二子学一。」は、「子」に(ヲシテ)、「学」に(バ)を送り仮名として補い、「子をして学ばしむ。」(子に学ばせる)と読みます。「学」に返り点(この場合は一二点)が付いていることから分かるように、使役動詞「使」自体は、「子」と「学」を読み終えたあとに、大きく返って「しむ」と読まれます。

令・遣を使った例

使役動詞が変わっても、読み方・書き下し方の考え方は同じです。

「令二我帰一。」→「我をして帰らしむ。」(私を帰らせる)

「遣」は、「人を差し向けて〜させる」という、使いを送るニュアンスを持つ点で使・令とは少し違いますが、書き下し文の形自体は同じ「ヲシテ〜しム」になります。

例題

例題1(基本)

問題

次の文を書き下し文にせよ。

父 使二 子 学(バ)一。

解答・解説を見る

「子」に送り仮名(ヲシテ)、「学」に送り仮名(バ)が付いています。「学」に一点、「使」に二点が付いているので、「子」「学」をそのままの順で先に読んでから、「使」に返ります。

読む順は「父→子→学→使」です。「使」は文末で「しむ」と読みます。

答え:父子をして学ばしむ。

「父が子に学問をさせる」という意味になります。

例題2(標準)

問題

次の文を書き下し文にせよ。

君 令二 我 帰(ラ)一。

解答・解説を見る

「使」ではなく「令」が使われていますが、考え方はまったく同じです。「我」に送り仮名(ヲシテ)、「帰」に送り仮名(ラ)が付いています。「我」「帰」を先に読んでから、「令」に返ります。

答え:君我をして帰らしむ。

「主君が私を帰らせる」という意味になります。「令」は「使」よりもやや改まった、命令に近いニュアンスを持ちますが、書き下し文の形自体は同じです。

例題3(応用)

問題

次の文を書き下し文にせよ。

天帝 使下 我 長二 百獣一上。

解答・解説を見る

まず内側の一二点を処理します。「百」「獣」をそのままの順で読んでから、「長」に返ります。「長」は「〜の長(おさ)である」という意味の用言で、「長たり」の形になります。「百獣に長たり」となります。

続いて、この「長二百獣一」全体(すでに一二点を含む範囲)を、外側から上下点で「使」に返します。「我」は「使」のすぐあとにあり、そのままの位置で読みます(送り仮名としてヲシテを補う)。

読む順は「天帝→我→百→獣→長→使」です。

答え:天帝我をして百獣に長たらしむ。

これは『戦国策』にある、「虎の威を借る狐」の故事の一節です。虎に捕まった狐が、「天の神様が私を百獣の王(長)にお命じになったのだ」と虎をだまして脅す場面で、この使役形が使われています。一二点と上下点が組み合わさった、複合的な返り点の良い練習にもなります。

確認問題

問題

次の文を書き下し文にせよ。

師 使二 生 泣(カ)一。

答え

師、生をして泣かしむ。