漢字・語彙・文法 / 語彙力
ことわざ
要点整理
ことわざは、身近な生き物や自然現象、日常の道具などを比喩(たとえ)として使い、人生の教訓や生活の知恵を短く言い表したものです。たとえば「石の上にも三年」は、冷たい石の上でも三年座り続ければ暖まるという情景から、「つらいことも辛抱強く続ければ、いつか報われる」という教訓を伝えています。
ことわざを覚えるときのコツは、①ことわざそのものの意味、②似た意味を持つ「類義のことわざ」、③反対の意味を持つように見える「対義的なことわざ」、の3つをセットで整理することです。特に③は、「一見矛盾しているが、使う場面が違うだけ」という点が問われやすいポイントです。
努力・継続に関することわざ
| ことわざ | 意味 | 類義のことわざ |
|---|---|---|
| 石の上にも三年 | つらくても辛抱強く続ければ、いつか成功する | 桃栗三年柿八年(何事も成果が出るまでには相応の年月がかかる) |
| 塵も積もれば山となる | わずかなものでも、積み重なれば大きなものになる | 一滴一滴が石をも穿(うが)つ |
| 継続は力なり | 何事も長く続けることが、いずれ大きな力になる | ローマは一日にして成らず |
| 千里の道も一歩から | どんな大きな物事も、まず身近な一歩から始まる | 塵も積もれば山となる |
| 蒔かぬ種は生えぬ | 何もせずに良い結果だけを望んでも得られない。行動しなければ結果は生まれない | 棚からぼた餅は落ちてこない |
用心・準備に関することわざ
| ことわざ | 意味 | 類義のことわざ |
|---|---|---|
| 備えあれば憂いなし | 日頃から準備をしておけば、いざというときも心配ない | 転ばぬ先の杖 |
| 転ばぬ先の杖 | 失敗しないように、前もって用心し対策をとっておくこと | 備えあれば憂いなし |
| 石橋を叩いて渡る | 非常に用心深く、安全を確かめてから物事を行うこと | 念には念を入れよ |
| 火のない所に煙は立たぬ | 何の根拠もないところに噂は立たない。噂には何らかの原因があるものだ | ― |
| 一寸先は闇 | 少し先のことでも、何が起こるか全くわからないということ | 明日は我が身 |
人間関係・処世に関することわざ
| ことわざ | 意味 | 類義のことわざ |
|---|---|---|
| 情けは人のためならず | 人に親切にしておけば、めぐりめぐって自分にも良い報いが返ってくる | ― |
| 郷に入っては郷に従え | よその土地や環境に入ったら、そこの習慣や風習に従うのがよい | 所変われば品変わる |
| 三人寄れば文殊の知恵 | 平凡な人でも、3人集まって考えれば、優れた知恵が出るものだ | 二人寄れば知恵出る |
| 立つ鳥跡を濁さず | 立ち去る者は、後始末をきちんとしてから去るべきだということ | ― |
| 隣の芝生は青い | 他人のものは、自分のものよりも良く見えてしまうものだ | ないものねだり |
実力・才能を戒めることわざ
自分の力を過信したり、逆に軽く見たりすることを戒めることわざです。「実力がある人ほど謙虚だ」「うっかりミスは誰にでもある」という2種類の教えがある点に注意しましょう。
| ことわざ | 意味 | 類義のことわざ |
|---|---|---|
| 能ある鷹は爪を隠す | 本当に実力のある人は、それをひけらかさず、謙虚にふるまうものだ | ― |
| 出る杭は打たれる | 人より優れていたり、目立つ行動をしたりする者は、とかく非難や妨害を受けやすい | ― |
| 弘法にも筆の誤り | どんなにその道の名人であっても、時には失敗することがある | 猿も木から落ちる/河童の川流れ |
| 猿も木から落ちる | 木登りが得意な猿でも、木から落ちることがある。名人でも失敗することがある | 弘法にも筆の誤り |
| 紺屋の白袴 | 他人のことで忙しく、自分のことにまで手が回らないこと(染物屋がよそ様の着物ばかり染めて、自分は染めていない白い袴のままでいることから) | 医者の不養生 |
因果・自業自得に関することわざ
| ことわざ | 意味 | 類義のことわざ |
|---|---|---|
| 身から出た錆 | 自分の犯した悪い行いの報いを、自分自身が受けること | 自業自得 |
| 蒔いた種は自分で刈れ | 自分がやったことの責任は、自分でとらなければならないということ | 身から出た錆 |
| 因果応報 | 良い行いには良い報い、悪い行いには悪い報いが、必ず自分に返ってくるということ(もとは仏教語) | 身から出た錆 |
| 井の中の蛙大海を知らず | 狭い世界に閉じこもっていると、視野が狭くなり、広い世界のことを知らずにいること | 世間知らず |
好機・機会に関することわざ
| ことわざ | 意味 | 類義のことわざ |
|---|---|---|
| 鉄は熱いうちに打て | 物事は、勢いや意欲があるうちにやらないと、機会を逃してしまう | 善は急げ |
| 善は急げ | 良いと思ったことは、迷わずすぐに実行するのがよい | 鉄は熱いうちに打て |
| 渡りに船 | 困っているときに、ちょうど都合の良い助けが得られること | 地獄で仏 |
| 案ずるより産むが易し | あれこれ心配するよりも、実際にやってみると、案外簡単にできるものだ | ― |
一見矛盾する、対になることわざ
ことわざの中には、正反対のことを言っているように見えるペアがあります。実際は「使う場面(状況)が違う」だけで、どちらも正しい教訓です。テストでは、この違いを説明させる問題がよく出ます。
| ことわざA | ことわざB | 使い分けのポイント |
|---|---|---|
| 善は急げ(良いことは早く実行せよ) | 急がば回れ(急ぐときほど、確実な遠回りの方法をとれ) | Aは「行動を起こすタイミング」について、Bは「行動の際の方法・手段」についての教え。矛盾ではなく、場面が異なる。 |
| 二兎を追う者は一兎をも得ず(欲張って2つを同時に狙うと、両方とも失敗する) | 一石二鳥(1つの行動で2つの利益を得る) | Aは「別々の努力が必要な2つの目標を同時に追う」場合、Bは「1つの行動が自然に2つの結果を生む」場合の話。狙っているものの性質が異なる。 |
| 出る杭は打たれる(目立つと非難される) | 能ある鷹は爪を隠す(実力者ほど謙虚にふるまう) | 矛盾ではなく、Bはむしろ「Aのような非難を避けるための処世術」を説いていると考えると整合的。 |
例題
例題1(基本)
問題
次のことわざの意味として最も適切なものを、後のア〜エからそれぞれ選べ。
(1) 石の上にも三年 (2) 備えあれば憂いなし (3) 情けは人のためならず
ア.人に親切にしておくと、いずれ自分に良い報いが返ってくる イ.日頃から準備をしておけば、いざというときも心配ない ウ.つらくても辛抱強く続ければ、いつか成功する エ.欲張って2つを同時に狙うと、両方とも失敗する
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それぞれのことわざが「何をたとえているか」から考えます。
(1)「石の上にも三年」は、冷たい石の上に三年座り続ければ暖まる、という情景から、辛抱強く続けることの大切さを説いています。→ウ
(2)「備えあれば憂いなし」は文字通り、事前の備えがあれば心配事(憂い)がない、という意味です。→イ
(3)「情けは人のためならず」は、「人のためにならない」という意味ではありません。「情け(親切)は、人のためだけのものではなく(=巡りめぐって自分のためにもなる)」という意味なので、注意が必要です。→ア
エは「二兎を追う者は一兎をも得ず」の意味なので、この3つのどれにも当てはまりません。
答え:(1)ウ (2)イ (3)ア
例題2(標準)
問題
「情けは人のためならず」ということわざについて、多くの人がしてしまいがちな誤解の内容を説明し、正しい意味を述べよ。
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このことわざは、「ならず」という古めかしい打ち消しの表現のために誤解されやすい、テスト頻出の一問です。
まず、多くの人がしてしまう誤解を確認します。「ならず」を単純に現代語の「~にならない」と読んでしまい、「情け(親切)をかけることは、その人のためにならない(=甘やかすことになるので、突き放した方がよい)」という意味だと誤解してしまうケースが非常に多いです。
しかし、これは誤りです。正しくは、「情けは人『の』ためならず」という古い言い回しで、「人のためだけのものではない」、つまり「人に親切にしておけば、それはめぐりめぐって自分自身のためにもなる」という意味です。人に親切にすることを勧める、前向きなことわざなのです。
答え:「人にかける情け(親切)は、その人のためにならない」という誤解をされやすいが、正しくは「情けは人のためだけのものではなく、めぐりめぐって自分自身のためにもなる」という意味で、人に親切にすることをすすめることわざである。
例題3(応用)
問題
「善は急げ」と「急がば回れ」は、一見すると正反対のことを言っているように見える。この2つのことわざが矛盾しないのはなぜか、それぞれの意味の違いに触れながら説明せよ。
解答・解説を見る
一見矛盾することわざの問題では、それぞれのことわざが「何について」教えているのかを分けて考えるのがポイントです。
「善は急げ」は、良いと思ったことを実行に移すタイミングについての教えです。迷ったり先延ばしにしたりせず、思い立ったらすぐに行動を起こすべきだ、という意味です。
一方、「急がば回れ」は、目的地に急いで着きたいときに選ぶ手段・方法についての教えです。近道に見える危険な道を選ぶより、遠回りでも確実で安全な道を選んだ方が、結局は早く安全に着ける、という意味です。
つまり、「善は急げ」は「いつ始めるか」、「急がば回れ」は「どうやって進めるか」について述べており、教えている対象が異なります。「思い立ったらすぐに始めるべきだが(善は急げ)、始めた後の進め方は、危険な近道より確実な方法を選ぶべきだ(急がば回れ)」というように、両方を同時に実践することも十分可能であり、矛盾しません。
答え:「善は急げ」は行動を起こす『タイミング』についての教え(すぐに始めよ)であるのに対し、「急がば回れ」は行動する際の『方法・手段』についての教え(確実な方法を選べ)である。教えている対象が異なるため、両方とも同時に成り立ち、矛盾しない。
確認問題
問題
次の(1)〜(3)のことわざの意味を、それぞれ簡潔に説明せよ。
(1) 弘法にも筆の誤り (2) 出る杭は打たれる (3) 二兎を追う者は一兎をも得ず
答え
(1) どんなに優れた名人であっても、時には失敗することがあるということ。 (2) 人より優れていたり目立ったりする者は、とかく非難や妨害を受けやすいということ。 (3) 欲張って2つのことを同時に狙うと、結局どちらも成功しないということ。