漢字・語彙・文法 / 語彙力
慣用句(体の部分を使った表現など)
要点整理
慣用句は、2つ以上の単語が結びついて、それぞれの単語の意味を単純に足しただけでは説明できない、特別な意味を持つようになった言い回しです。たとえば「顔が広い」は、実際の顔の大きさの話ではなく、「多くの人に知られていて、交際範囲が広い」という意味を表します。
体の部位を使った慣用句は特に数が多く、入試や定期テストの頻出分野です。覚えるときは、①部位ごとにグループ分けする、②似た意味の部位(たとえば「頭」と「顔」)で使う慣用句を混同しないようにする、という2点を意識すると整理しやすくなります。
頭・顔を使った慣用句
| 慣用句 | 意味 | 用例 |
|---|---|---|
| 頭が上がらない | 引け目があって、対等な態度をとれない | 「幼い頃に世話になった恩師には頭が上がらない。」 |
| 頭を抱える | 良い解決策が見つからず、深く悩む | 「山積みの課題に頭を抱える。」 |
| 頭が下がる | 相手の立派な行いに、感心し敬服する | 「彼の努力には頭が下がる思いだ。」 |
| 頭を冷やす | 興奮した気持ちを落ち着かせる | 「まずは頭を冷やして考え直そう。」 |
| 頭が固い | 考え方に柔軟性がなく、融通が利かない | 「頭が固い上司で、新しい提案を聞き入れない。」 |
| 顔が広い | 多くの人に知られていて、交際範囲が広い | 「彼は業界で顔が広く、色々な人を紹介してくれる。」 |
| 顔から火が出る | 恥ずかしさで、顔が真っ赤になるほど恥じ入る | 「大勢の前で失敗し、顔から火が出る思いだった。」 |
| 顔に泥を塗る | 相手の名誉や体面を傷つける | 「不祥事で会社の顔に泥を塗る結果になった。」 |
| 顔をつぶす | 面目・体面を失わせる | 「約束を破って、彼の顔をつぶしてしまった。」 |
目・耳・鼻を使った慣用句
| 慣用句 | 意味 | 用例 |
|---|---|---|
| 目が高い | 物の良し悪しを見分ける力に優れている | 「この骨董品の価値がわかるとは目が高い。」 |
| 目に余る | 程度がひどく、黙って見過ごせない | 「彼のわがままは目に余るものがある。」 |
| 目を疑う | 信じられない光景を見て、驚く | 「あまりの変わりように目を疑った。」 |
| 目からうろこが落ちる | あることをきっかけに、急に物事の真相がわかるようになる | 「先生の一言で目からうろこが落ちる思いがした。」 |
| 大目に見る | 相手の失敗などを、厳しくとがめずに許す | 「初めてのミスなので、今回は大目に見よう。」 |
| 耳が痛い | 自分の弱点を指摘され、聞くのがつらい | 「その指摘は耳が痛い話だ。」 |
| 耳にたこができる | 同じ話を何度も聞かされて、うんざりする | 「その注意は耳にたこができるほど聞いた。」 |
| 耳を貸す | 人の話に耳を傾けて、聞く | 「彼は他人の意見に全く耳を貸さない。」 |
| 鼻が高い | 得意になっている。誇らしく思う | 「息子の活躍に、親として鼻が高い。」 |
| 鼻につく | 言動が気取っていて、嫌味に感じられる | 「彼の自慢話が鼻につく。」 |
口・舌を使った慣用句
| 慣用句 | 意味 | 用例 |
|---|---|---|
| 口が堅い | 秘密などを軽々しく人にしゃべらない | 「彼は口が堅いから、相談しても安心だ。」 |
| 口が滑る | うっかり言ってはいけないことを言ってしまう | 「口が滑って、内緒の話を漏らしてしまった。」 |
| 口を挟む | 他人の話の途中に割って入って発言する | 「話に口を挟んで申し訳ないが、一言よろしいか。」 |
| 口を割る | 隠していたことを白状する | 「厳しい追及の末、ようやく口を割った。」 |
| 口をそろえる | 複数の人が、同じ内容を言う | 「参加者は口をそろえて成功を喜んだ。」 |
| 舌を巻く | 相手の能力に非常に驚き、感心する | 「その早業に、周囲は舌を巻いた。」 |
| 舌の根の乾かぬうちに | 言い終わったすぐ後に(前言と矛盾する行動をとる、という文脈で使う) | 「謝った舌の根の乾かぬうちに、また同じ失敗をした。」 |
首・肩・胸を使った慣用句
| 慣用句 | 意味 | 用例 |
|---|---|---|
| 首を長くする | 期待して、待ち焦がれる | 「合格発表を首を長くして待つ。」 |
| 首をひねる | 納得できず、疑問に思う | 「不可解な結果に首をひねった。」 |
| 首が回らない | 借金などで、やりくりがつかず困っている | 「出費がかさみ、首が回らない状態だ。」 |
| 肩を落とす | がっかりして、元気をなくす | 「不合格の知らせに肩を落とした。」 |
| 肩の荷が下りる | 責任や負担から解放されて、ほっとする | 「発表を終えて肩の荷が下りた。」 |
| 肩身が狭い | 世間に対して引け目を感じ、堂々とできない | 「成績が振るわず、肩身が狭い思いをした。」 |
| 胸をなでおろす | 心配事が解決し、ほっと安心する | 「無事に到着したと聞き、胸をなでおろした。」 |
| 胸を打つ | 深く感動させる | 「彼女のスピーチは多くの人の胸を打った。」 |
腹・手・足を使った慣用句
| 慣用句 | 意味 | 用例 |
|---|---|---|
| 腹が立つ | 怒りの感情がわく | 「理不尽な扱いに腹が立った。」 |
| 腹を割る | 本心を隠さず、率直に話す | 「一度腹を割って話し合おう。」 |
| 腹が黒い | 心の中で悪いことを企んでいる | 「腹が黒い人には気をつけろ。」 |
| 手を焼く | 扱いに困り、対応に苦労する | 「わがままな後輩の指導に手を焼く。」 |
| 手も足も出ない | 自分の力ではどうすることもできない | 「難問すぎて手も足も出なかった。」 |
| 手を抜く | 必要な労力をかけず、いいかげんに済ませる | 「掃除の手を抜いてはいけない。」 |
| 足を洗う | 好ましくない仕事や生活からきっぱり抜け出す | 「悪い仲間から足を洗う決心をした。」 |
| 足を引っ張る | 他人の成功や物事の進行を妨げる | 「チームの足を引っ張らないよう努力する。」 |
| 二の足を踏む | ためらって、なかなか決断・実行できない | 「値段の高さに二の足を踏んでしまう。」 |
腰・骨・肝を使った慣用句
| 慣用句 | 意味 | 用例 |
|---|---|---|
| 腰が低い | 相手に対してへりくだり、謙虚な態度をとる | 「社長なのに腰が低く、誰にでも丁寧だ。」 |
| 腰を据える | 落ち着いて、一つの物事にじっくり取り組む | 「腰を据えて研究に取り組む。」 |
| 腰が引ける | 物事に対して消極的になり、しり込みする | 「難しい仕事だと知って、途端に腰が引けた。」 |
| 骨が折れる | 非常に労力や苦労を要する | 「この作業はなかなか骨が折れる。」 |
| 骨を折る | 苦労をいとわず、力を尽くす | 「後輩のために骨を折って世話をした。」 |
| 肝を冷やす | 危険な目にあって、ひやりとする | 「あわや事故というところで肝を冷やした。」 |
| 肝が据わる | 度胸があり、めったなことでは動じない | 「彼女は肝が据わっていて、緊急時にも冷静だ。」 |
例題
例題1(基本)
問題
次の( )に適する体の部位を表す漢字を答え、慣用句を完成させよ。
(1) 相手の立派な行いに、感心し敬服することを「( )が下がる」という。 (2) 秘密などを軽々しく人にしゃべらないことを「( )が堅い」という。 (3) 責任や負担から解放されて、ほっとすることを「( )の荷が下りる」という。
解答・解説を見る
体の部位を使った慣用句は、部位ごとに意味のグループが違うので、まずどんな場面・気持ちを表す慣用句かを考えると、正しい部位を選びやすくなります。
(1) 相手を敬う気持ちを表す動作としては「頭を下げる」がイメージしやすく、そこから「頭が下がる」という表現になります。
(2) 発言に関わる部位なので「口」が適切です。「口が堅い」で、秘密を守れることを表します。
(3) 「荷」という言葉と結びつくのは「肩」です。重い荷物を肩に背負っているイメージから、「肩の荷が下りる」で負担からの解放を表します。
答え:(1)頭 (2)口 (3)肩
例題2(標準)
問題
次の文中の慣用句の使い方が正しいものを一つ選べ。
① 彼はいつも自慢話ばかりで、鼻につく人だ。 ② 難しい問題が解けて、頭が上がらない気持ちになった。 ③ 厳しい追及にも屈せず、最後まで口が滑らなかった。
解答・解説を見る
慣用句の誤用を見抜く問題では、それぞれの慣用句の正確な意味を思い出し、文の内容と矛盾していないかを確認します。
①「鼻につく」は「言動が気取っていて、嫌味に感じられる」という意味です。「自慢話ばかりで嫌味に感じられる人」という文脈にぴったり合っており、正しい用法です。
②「頭が上がらない」は「引け目があって対等な態度をとれない」という意味であり、「問題が解けた」という達成感を表す文脈とは合いません。これは誤用です。この文脈で使うなら「達成感を味わった」などが適切です。
③「口が滑る」は「うっかり言ってはいけないことを言ってしまう」という意味です。「最後まで秘密を守り通した」という内容を表したいなら、「口を割らなかった」を使うべきで、「口が滑らなかった」では意味が通りません(「口が堅い」との混同による誤用)。
答え:①
例題3(応用)
問題
「情けは人のためならず」ということわざと似た趣旨で、「他人に親切にする」ことを表す慣用句を選び、そうでない慣用句と区別せよ。次のうちから、意味の異なるものを一つ選び、理由も説明せよ。
① 骨を折る ② 手を焼く ③ 腰が低い
解答・解説を見る
まず①〜③それぞれの意味を確認します。
①「骨を折る」は「苦労をいとわず、力を尽くすこと」で、多くの場合、他人のために労力を惜しまず尽くす、という文脈で使われます。
②「手を焼く」は「扱いに困り、対応に苦労すること」で、相手(多くは扱いにくい人や物事)に振り回されて困っている、という自分本位の苦労を表す表現です。他人のために積極的に何かをしてあげる意味は含まれません。
③「腰が低い」は「相手に対してへりくだり、謙虚な態度をとること」で、人柄や態度についての表現です。
このうち、「他人のために積極的に尽力する」という意味を持つのは①のみです。②は「困っている・持て余している」という消極的な状態を表す点で、①・③とは性質が異なります。
答え:②「手を焼く」が意味の異なるもの。①は「他人のために力を尽くす」、③は「謙虚な態度」を表すのに対し、②は「扱いに困り苦労する」という、相手に振り回されて困っている状態を表す点で異なる。
確認問題
問題
次の(1)〜(3)の意味を表す慣用句を、体の部位を含む形でそれぞれ答えよ。
(1) 期待して、待ち焦がれること (2) 自分の力ではどうすることもできないこと (3) ためらって、なかなか決断・実行できないこと
答え
(1) 首を長くする (2) 手も足も出ない (3) 二の足を踏む