漢文 / 重要句法
仮定形
要点整理
若・如・使を使う仮定形
「もし〜ならば」という仮定の意味は、若・如・使などの字を文(節)の初めに置くことで表されます。いずれも読み方は「もシ」で、あとに続く内容が「まだ実現していない、仮の想定」であることを示します。
若・如・使自体には返り点は付かず、文の初めでそのまま「もシ」と読みます。あとに続く動詞の活用形を、未然形+「ば」(仮定)にすることで、「もし〜ならば」という意味を完成させます。
注意:「使」は2つの顔を持つ字です。使役形のトピックで学んだ「〜ヲシテ…しム」(使役)としての使と、ここで学ぶ「もシ」(仮定)としての使は、同じ漢字です。どちらの意味かは、あとに続く形から判断します。使役の使のあとには「(人)ヲシテ」という送り仮名が付きますが、仮定の使にはこの送り仮名は付きません。
否定と組み合わさる仮定:「ずんば」
否定を表す「不」が、仮定の文脈の中で使われると、単なる「ず」ではなく、「ずんば」(もし〜しないならば)と読むことがあります。これは、若・如・使が文中になくても、否定の未然形に「んば」を付けるだけで、「もし〜しなければ」という仮定の意味を作り出せることを意味します。
例題
例題1(基本)
問題
次の文を書き下し文にせよ。
若レ有レ 過(チ)、必 改レ 之(ヲ)。
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「若」はそのまま「もシ」と読みます。「過」にレ点が付いているので、「過ち有らば」(未然形+ば)となります。「之」にレ点が付いているので、「之を改めよ」(命令形)となります。
答え:もし過ち有らば、必ず之を改めよ。
「もし過ちがあったら、必ずそれを改めなさい」という意味です。
例題2(標準)
問題
次の文を書き下し文にせよ。
如レ不レ能(ハ)、勿レ強(フル)。
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「如」はそのまま「もシ」と読みます。レ点が2つ連続しているので、下から順に返ります。「能」を先に読んでから「不」に返り、「能はず」となります。ここでは仮定の文脈の中にある否定なので、「んば」を補って「能はずんば」(もし能力がなければ)とします。
続いて「強」にレ点が付いているので、「強ふる」を先に読んでから「勿」に返り、「強ふる勿かれ」(強いてはいけない)となります。
答え:もし能はずんば、強ふる勿かれ。
「もしできないのであれば、無理強いしてはいけない」という意味です。
例題3(応用)
問題
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。
不レ入二 虎穴一、不レ得二 虎子一。
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この文には「若」「如」「使」といった仮定を表す字は一つもありません。それでも、否定の「ずんば」を使うことで、仮定の意味を作ることができます。
前半を考えます。「虎」「穴」をそのままの順で読んでから、「入」に返ります(一二点)。「入」を読み終えたところで「不」に返ります(レ点)。「虎穴」という場面設定そのものが仮の話であることから、「入らず」ではなく「入らずんば」(もし入らなければ)と読みます。
後半も同じ構造です。「虎子」を読んでから「得」に返り、「不」に返って「虎子を得ず」となります。こちらは仮定ではなく結果を述べる部分なので、そのまま「ず」で結びます。
答え:虎穴に入らずんば、虎子を得ず。/ 虎の巣穴に入らなければ、虎の子を手に入れることはできない。
これは、危険を冒さなければ大きな成果は得られない、という意味のことわざのもとになった、『後漢書』班超伝にある有名な一節です。「若」「如」「使」がなくても、「ずんば」という読み方だけで仮定の意味を表せることを、この例で確認しておきましょう。
確認問題
問題
次の文を書き下し文にせよ。
使 我 有レ 財(カ)、必 与二 貧者一。
答え
もし我に財有らば、必ず貧者に与へん。