漢文 / 漢文読解
漢詩の形式と鑑賞(五言絶句・七言律詩など)
要点整理
漢詩には、古くからの比較的自由な形式である古体詩と、唐代に規則が整えられた近体詩があります。高校の漢文で学ぶ漢詩は、ほとんどが近体詩で、句数・字数・押韻・対句について、細かいルールが決まっているのが特徴です。ルールを知っていると、詩の形式を見分けたり、押韻や対句に注目して鑑賞したりできるようになります。
近体詩の4つの形式
近体詩は、「1句が何句あるか(句数)」と「1句が何字か(字数)」の組み合わせで、次の4種類に分類されます。
| 形式 | 句数 | 1句の字数 | 全体の字数 |
|---|---|---|---|
| 五言絶句 | 4句 | 5字 | 20字 |
| 七言絶句 | 4句 | 7字 | 28字 |
| 五言律詩 | 8句 | 5字 | 40字 |
| 七言律詩 | 8句 | 7字 | 56字 |
「絶句」は4句、「律詩」は8句という句数の違いがまずあり、それぞれに「五言(1句5字)」と「七言(1句7字)」のバリエーションがある、と整理すると覚えやすくなります。
絶句の構成:起承転結
4句からなる絶句は、「起承転結」という4段構成で説明されるのが伝統的な理解です。
- 第1句(起句):話題を起こす
- 第2句(承句):起句の内容を受けて発展させる
- 第3句(転句):内容や視点を転換する
- 第4句(結句):全体をまとめて結ぶ
律詩の構成:4つの聯と対句のルール
8句からなる律詩は、2句ずつのまとまりに分けられ、それぞれに名前が付いています。
| 聯の名前 | 該当する句 | 対句にする規則 |
|---|---|---|
| 首聯 | 第1句・第2句 | 対句にしなくてよい |
| 頷聯 | 第3句・第4句 | 対句にする(規則) |
| 頸聯 | 第5句・第6句 | 対句にする(規則) |
| 尾聯 | 第7句・第8句 | 対句にしなくてよい |
律詩でもっとも重要な規則は、頷聯(3・4句目)と頸聯(5・6句目)は必ず対句にするという点です。対句とは、2つの句の文法的な構造(名詞・動詞・修飾語の並び方)をそろえながら、意味の上でも対応させる技法です。首聯・尾聯は対句にしてもよいのですが、必須ではありません。
押韻のルール
押韻とは、句末に発音の響きが似た漢字(同じ韻に属する漢字)を置くことです。近体詩の押韻には、字数による違いがあります。
- 五言詩:偶数句末(2句・4句・6句・8句)で韻を踏むのが基本。第1句末は韻を踏まないことが多いが、踏む例もある。
- 七言詩:第1句末に加えて、偶数句末(1句・2句・4句・6句・8句)で韻を踏むのが基本。
つまり、七言詩は五言詩よりも1か所多く、最初の句からすでに韻を踏み始める、という違いがあります。押韻は中国語(当時の発音)にもとづくルールなので、日本語の音読み・訓読みでは韻を踏んでいるように見えない場合もあります。押韻を確認するときは、字の意味だけでなく「同じ響きのグループに属する字かどうか」に注目します。
代表的な唐詩で確認する
五言絶句の例:王之渙「登鸛雀楼」
白日依㆑山尽(白日 山に依りて尽き) 黄河入㆑海流(黄河 海に入りて流る) 欲㆑窮㆑千里目(千里の目を窮めんと欲し) 更上㆑一層楼(更に上る 一層の楼)
4句・1句5字の五言絶句です。句末を見ると、「流(りゅう)」と「楼(ろう)」が韻を踏んでおり、これは偶数句末(2句・4句)で押韻するという五言詩の基本ルール通りです。第1句末の「尽」は韻を踏んでいません。
七言絶句の例:杜牧「江南春」
千里鶯啼緑映レ紅(千里 鶯啼いて 緑 紅に映ず) 水村山郭酒旗風(水村山郭 酒旗の風) 南朝四百八十寺(南朝四百八十寺) 多少楼台煙雨中(多少の楼台 煙雨の中)
4句・1句7字の七言絶句です。句末は「紅(こう)」「風(ふう)」「中(ちゅう)」で韻を踏んでおり、第1句末からすでに押韻が始まっています。これは、七言詩では第1句末を含めて韻を踏むという基本ルール通りです。第3句末の「寺」は韻を踏んでいません。
五言律詩の例:杜甫「春望」
国破山河在(国破れて山河在り) 城春草木深(城春にして草木深し) 感レ時花濺レ涙(時に感じては花にも涙を濺ぎ) 恨レ別鳥驚レ心(別れを恨んでは鳥にも心を驚かす) 烽火連㆑三月(烽火 三月に連なり) 家書抵㆑万金(家書 万金に抵る) 白頭掻更短(白頭 掻けば更に短く) 渾欲㆑不レ勝レ簪(渾べて簪に勝へざらんと欲す)
8句・1句5字の五言律詩です。句末の「深」「心」「金」「簪」が韻を踏んでおり、偶数句末(2・4・6・8句目)で押韻するという五言詩のルール通りです。
対句にも注目しましょう。頷聯(3・4句目)の「感時花濺涙」と「恨別鳥驚心」は、「感時」と「恨別」、「花濺涙」と「鳥驚心」がそれぞれ対応する構造になっており、見事な対句です。頸聯(5・6句目)の「烽火連三月」と「家書抵万金」も、「烽火」と「家書」、「連三月」と「抵万金」が対応しており、これも対句になっています。戦乱で家族の消息が届かない切実な思いが、対句の形式によって際立たせられています。
なお、七言律詩(1句7字・8句)も基本的な考え方は五言律詩と同じで、頷聯・頸聯を対句にし、押韻は七言詩のルール(第1句末を含む偶数句末)にしたがいます。代表的な作品に、杜甫「登高」などがあります。
例題
例題1(基本)
問題
ある漢詩を数えたところ、句数が8句、1句の字数が7字であった。この詩の形式を答えよ。また、この形式で対句にすることが規則になっているのは何句目と何句目か、すべて答えよ。
解答・解説を見る
句数が8句なので「律詩」、1句が7字なので「七言」です。したがって形式は七言律詩です。
律詩は2句ずつ4つの聯(首聯・頷聯・頸聯・尾聯)に分かれ、このうち対句にするという規則があるのは、頷聯(3句目・4句目)と頸聯(5句目・6句目)です。首聯(1・2句目)と尾聯(7・8句目)は対句でなくてもかまいません。
答え:形式は七言律詩。対句が規則になっているのは3句目・4句目(頷聯)と、5句目・6句目(頸聯)。
例題2(標準)
問題
次の五言絶句について、韻を踏んでいる句を、句末の字とともにすべて指摘せよ。
王之渙「登鸛雀楼」 白日依㆑山尽 / 黄河入㆑海流 / 欲㆑窮㆑千里目 / 更上㆑一層楼
解答・解説を見る
この詩は五言絶句なので、押韻のルールは「偶数句末(2句・4句)で韻を踏むのが基本、第1句末は韻を踏まないことが多い」というものでした。
句末の字を確認すると、第1句末は「尽」、第2句末は「流」、第3句末は「目」、第4句末は「楼」です。このうち「流(りゅう)」と「楼(ろう)」は同じ響きのグループに属する字で、韻を踏んでいます。「尽」と「目」は、この韻のグループには属していません。
これは、五言詩の基本ルール(偶数句末である2句・4句で押韻し、第1句末・第3句末〈奇数句末〉は押韻しない)と一致しています。
答え:第2句(黄河入海流)の「流」と、第4句(更上一層楼)の「楼」で韻を踏んでいる。
例題3(応用)
問題
杜甫「春望」の頷聯「感時花濺涙、恨別鳥驚心」が対句になっていることを、語の対応関係を示しながら説明せよ。
解答・解説を見る
対句とは、2つの句の文法的な構造をそろえながら、意味の上でも対応させる技法でした。この2句を、対応する部分ごとに分けて比べてみます。
- 「感時」と「恨別」:どちらも「動詞+目的語(のような2字熟語)」の形で、「時勢を思って心を痛める」ことと「(家族との)別れを嘆く」ことを表し、どちらも心情を表す動詞句として対応している。
- 「花」と「鳥」:どちらも自然の中の具体物(植物と動物)で、対応している。
- 「濺涙」と「驚心」:どちらも「動詞+目的語」の形で、「涙を濺ぐ(涙を流す)」ことと「心を驚かす」ことを表し、心が動かされる様子を表す動詞句として対応している。
このように、句の中の同じ位置にある語が、品詞・意味の上で対応するように並べられているのが対句です。花や鳥という本来なら心を和ませるはずのものにまで、時勢を憂え家族を思う作者の涙や動揺が重ねられている点に、この対句の表現効果があります。
答え:「感時」⇔「恨別」、「花」⇔「鳥」、「濺涙」⇔「驚心」がそれぞれ対応しており、文法構造をそろえながら意味の上でも対応させる、典型的な対句になっている。
確認問題
問題
句数が4句、1句の字数が5字である近体詩の形式を答えよ。また、この形式で押韻するのは基本的に何句目か答えよ。
答え
五言絶句。押韻するのは基本的に偶数句末(第2句・第4句)。第1句末は踏まないことが多いが、踏む例もある。