現代文 / 現代文の読み方の基本
対比構造を読み取る
要点整理
評論文に頻出する対比のパターン
評論文の多くは、単に1つの考えを述べるだけでなく、対立する2つの考え(AとB)を並べたうえで、そのどちらが正しいか、あるいはどう乗り越えるべきかを論じる形で書かれています。特に多いのが、次のパターンです。
- A(一般に信じられている考え・旧来の常識) を、まず紹介する
- 逆接の接続語(しかし・だが)を挟んで
- B(筆者が実際に主張したい、新しい・異なる考え) を示す
つまり、Aは筆者が最終的に否定したり、留保をつけたりするために提示された「当て馬」であることが多く、筆者が本当に伝えたいのはBの側です。このAとBの構造をつかむことが、評論文の主旨を正確につかむ最大の近道になります。
対比のサインを見つける
対比が行われていることは、次のような表現から見抜くことができます。
| サインの種類 | 表現の例 |
|---|---|
| 逆接 | しかし・だが・ところが・とはいえ |
| 対比を示す接続語 | 一方・それに対して・逆に |
| 対になる時間・立場の言葉 | かつては〜、今は〜/従来は〜、現在では〜 |
| 対になる評価の言葉 | 表面的には〜だが、実際には〜 |
これらのサインが出てきたら、それより前の内容(A)と後の内容(B)を、別々にメモしておく習慣をつけましょう。
対比構造を図式化して整理する
対比構造は、文中の言葉をそのまま2列の表にまとめると、驚くほど見通しがよくなります。
| A(旧来の考え・一般論) | B(筆者の主張) |
|---|---|
| 例:効率を上げることは無条件に善い | 例:効率化と引き換えに失われるものがある |
対比の軸(この例では「効率をめぐる評価」)を意識しながら、AとBのそれぞれに対応する語句を、本文から探して埋めていく練習をしましょう。設問で問われる「筆者の主張」は、ほぼ必ずBの列に対応する内容から答えることになります。
対比構造を利用した設問の解き方
空欄補充問題や選択肢問題では、「空欄やある選択肢が、AとBのどちら側の内容を述べているか」を判定するだけで、正解の方向性を大きく絞り込めることがあります。たとえば、文章の後半でBの主張が展開されている箇所に空欄がある場合、Aの側の内容(筆者が否定している一般論)を答えの候補に選んでしまうのは典型的な誤りです。空欄や選択肢の内容が、AとBのどちらの陣営に属する内容かを、常に意識しながら検討しましょう。
例題
例題1(基本)
問題
次の文章を、A(旧来の考え)とB(筆者の主張)に整理し、それぞれの内容を簡潔にまとめよ。
これまで、賢さとは多くの知識を記憶していることだと考えられてきた。しかし、必要な情報がいつでも検索できる時代においては、知識をどれだけ記憶しているかよりも、手に入れた情報が正しいかどうかを見極め、状況に応じて使いこなす力の方が重要になっている。
解答・解説を見る
「これまで、〜と考えられてきた」という表現は、旧来の一般論を導入する典型的な言い回しです。ここがAに当たります。続く「しかし」で内容が転換し、その後に筆者が重要だと考える内容(B)が述べられています。
答え:A(旧来の考え)=賢さとは、多くの知識を記憶していることである。 B(筆者の主張)=賢さとは、情報を見極め、状況に応じて使いこなす力である。
例題2(標準)
問題
次の文章の対比の軸(何について、何と何を比べているか)を10字程度で答えよ。また、筆者の主張はA・Bのどちらの側にあるか答えよ。
一昔前まで、旅行の魅力とは、見知らぬ土地で予想外の出来事に出会うことにあると考えられていた。ところが、事前に詳細な情報や写真が手に入る現在では、多くの旅行者が、あらかじめ調べた通りの体験を、確認するために旅をしているようにも見える。もっとも、これは旅の価値が下がったということではないだろう。目的地の情報を事前に十分に知っていてもなお、実際にその場に立ったときにしか得られない感覚は残り続けており、旅の魅力の核心は、いまもそこにあると私は考える。
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文章全体は、「一昔前の旅行の魅力(予想外の出来事との出会い)」と「現在の旅行のあり方(事前に調べた内容の確認)」という、旅行における「時代による変化」を軸に対比が組み立てられています。したがって対比の軸は「旅行の魅力(の変化)」のようにまとめられます。
ただし注意すべきは、この文章にはもう1段階のひねりがある点です。「もっとも」以降で、筆者は「事前に情報があっても、実際にその場に立ったときにしか得られない感覚は残る」と述べ、旅の魅力の本質は失われていないという、独自の主張を展開しています。この最後の一文こそが筆者の本当の主張であり、単純に「昔の旅行の方が良かった」という懐古的な主張(いわばAの単純な肯定)ではありません。
答え:対比の軸「旅行の魅力(の変化)」。筆者の主張は、単純なA(昔の旅の方が良かった)でもBの否定でもなく、「実際にその場に立つことでしか得られない感覚に、旅の魅力の核心は今も残っている」という、独自の結論の側にある。
例題3(応用)
問題
次の文章について、(1)対比されている2つの立場をそれぞれ要約し、(2)筆者がどちらの立場に近いか、根拠となる一文を抜き出して答えよ。
規則は、例外を許さず一律に適用してこそ公平である、という考え方がある。この考え方に立てば、個々の事情を考慮して例外を認めることは、不公平の温床になりかねない。しかし、あらゆる状況を想定して作られた規則など存在しない以上、一律な適用を貫くことは、かえって特定の立場の人々にだけ不利益を強いる結果になる場合がある。真に公平な運用とは、規則の文言をそのまま適用することではなく、その規則が本来何のために作られたのかという目的に立ち返り、個々の状況に応じて判断することによって、初めて実現されるのではないだろうか。
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(1) 1つ目の立場は「規則は例外を認めず一律に適用することこそ公平である」というものです。2つ目の立場は、「しかし」以降で示される、「一律な適用はかえって不利益を生むことがあり、規則の目的に立ち返って個々の状況に応じて判断すべきだ」というものです。
(2) 「しかし」という逆接のあとに展開される内容こそが、筆者が力点を置きたい主張です。さらに文末が「〜ではないだろうか」という、筆者自身の判断を控えめに、しかしはっきりと示す形で結ばれていることからも、筆者は2つ目の立場に近いことが読み取れます。根拠となる一文は、最後の「真に公平な運用とは、規則の文言をそのまま適用することではなく、その規則が本来何のために作られたのかという目的に立ち返り、個々の状況に応じて判断することによって、初めて実現されるのではないだろうか。」です。
答え:(1) A=規則は例外なく一律に適用してこそ公平だという立場。B=規則の目的に立ち返り、状況に応じて判断してこそ真に公平だという立場。(2) B。根拠は最後の一文「真に公平な運用とは〜初めて実現されるのではないだろうか。」
確認問題
問題
次の文章のA(一般に思われている考え)とB(筆者の主張)を、それぞれ15字程度で答えよ。
速く走ることこそが陸上競技の価値だと考える人は多い。だが、記録を更新できなかった選手の走りに、何の価値もないわけではない。全力を尽くす過程そのものにこそ、見る者の心を動かす力がある。
答え
A:速く走ることこそに価値がある。B:全力を尽くす過程にこそ価値がある。