古典(古文) / 古文読解
古文単語の覚え方・重要古語
要点整理
なぜ古語を覚える必要があるのか
古文読解でつまずく最大の原因は、実は難しい文法事項よりも、古今異義語(現代語と見た目が同じなのに意味が違う語)にあります。「あはれ」「をかし」のように、現代語の感覚でなんとなく意味を当てはめてしまうと、文章全体の意味を取り違えてしまいます。逆に言えば、頻出の古今異義語さえ正確に押さえておけば、文法を多少あいまいにしか覚えていなくても、大意はかなり正確につかめるようになります。
古語の覚え方のコツ
- 語源・イメージから覚える:「あはれ」は「ああ」という感動の声が語源で、しみじみとした感動全般を表す語です。「かわいそう」という意味は、後の時代に感動の対象が「気の毒な状況」に偏っていった結果生まれた、より限定的な意味です。まず本来の広い意味を押さえましょう。
- プラス・マイナスのイメージで整理する:「うつくし(かわいらしい、プラス)」「らうたし(かわいい、庇護したくなる、プラス)」「すさまじ(興ざめだ、マイナス)」のように、語のニュアンスの方向性でグループ分けすると覚えやすくなります。
- 複数の意味を持つ語はセットで覚える:「ゆかし」は「見たい・聞きたい・知りたい」のように、対象によって訳し分けが必要な語です。一つの意味だけでなく、代表的な訳し方を複数セットで覚えておきましょう。
- 現代語との「意味のずれ方」を意識する:古今異義語は、現代語の意味と全く無関係なわけではなく、多くは意味が変化・限定化した結果です。「なぜそうなったか」を考えると記憶に残りやすくなります。
特に重要な古今異義語
| 古語 | 意味 | 現代語との違い |
|---|---|---|
| あはれなり | しみじみと心を動かされる、感慨深い | 「かわいそう」に限定されない、感動全般を表す広い語 |
| をかし | 趣がある、興味深い、こっけいだ | 現代語の「おかしい(変だ)」とは方向性が異なる |
| つとめて | 早朝 | 「務めて(努力して)」ではない |
| ありがたし | めったにない、貴重だ | 「感謝する」の意味は後世に派生したもの |
| うつくし | かわいらしい(主に幼い者・小さいものに対して) | 現代語の「美しい」より対象が限定される |
| いとほし | かわいそうだ、気の毒だ | 「いとおしい(愛しい)」とは意味の方向がずれる |
| ゆかし | 見たい・聞きたい・知りたいと心引かれる | 「奥ゆかしい」の語源だが、対象は限定されない |
| すさまじ | 興ざめだ、殺風景だ | 「すさまじい(激しい・すごい)」ではない |
| なつかし | 心引かれる、慕わしい | 過去を懐かしむ意味に限らない |
| おどろく | はっと気づく、目を覚ます | 「驚愕する」ほど強い意味ではないことが多い |
| つきづきし | ふさわしい、似つかわしい | 現代語にほぼ対応する語がない |
| らうたし | かわいい、いとしい(庇護したくなる) | 「うつくし」よりも保護欲を伴う可愛さ |
| こころもとなし | 待ち遠しい、不安だ | 「心もとない(頼りない)」に近いが、待ち遠しさの意味が中心 |
| やがて | すぐに、そのまま | 現代語の「そのうち」とは逆に、即座を意味する |
| つゆ(〜打消) | 少しも(〜ない) | 打消の語と必ずセットで使われる呼応の副詞 |
| わろし | 良くない、感心しない | 「あし(悪し)」より程度が軽い「良くなさ」 |
「つとめて」は、清少納言『枕草子』の「冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず」(冬は早朝がよい。雪が降っているのは言うまでもなく)という一節で有名です。「早朝」という意味を知らずに「努力して」と読んでしまうと、文章全体の意味が通らなくなります。
呼応の副詞
「つゆ」のように、特定の種類の文末表現とセットで使われる副詞を呼応の副詞と呼びます。「つゆ〜打消」「え〜打消」(〜できない)、「よも〜じ」(まさか〜ないだろう)、「な〜そ」(〜するな)など、副詞を見た時点で文末の形をある程度予測できるので、長い文でも文末まで見通しを立てながら読むのに役立ちます。
例題
例題1(基本)
問題
次の文の傍線部「をかし」の意味として最も適切なものを、①滑稽だ ②趣がある ③恐ろしい ④気の毒だ から選べ。
「秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。」
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この文は秋の夕暮れの情景を描写しており、雁の列が小さく見える様子を、しみじみとした趣・味わいのあるものとして評価しています。「をかし」はここでは肯定的な情趣を表す語として使われています。
答え:②趣がある
例題2(標準)
問題
次の一文を現代語訳せよ。
「つとめて、雪のいと白う降りたるを見て、いとあはれなりけり。」
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「つとめて」は古今異義語で「早朝」を意味します。「あはれなり」も古今異義語で、ここでは単なる「かわいそう」ではなく、雪景色に対する「しみじみとした感動・趣深さ」を表しています。
現代語訳:「早朝、雪がとても白く降っているのを見て、たいそう趣深く感じられた。」
答え:早朝、雪がとても白く降っているのを見て、たいそう趣深く感じられた。
例題3(応用)
問題
次の文を現代語訳し、傍線部の古今異義語をそれぞれ指摘せよ。
「幼き人の、うつくしきさまにて、物などゆかしがりて問ふを、いとほしく思ひて、答へけり。」
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「うつくしき」は「うつくし」の連体形で、「かわいらしい」の意味です(現代語の「美しい」ではなく、幼い者への愛らしさを表します)。「ゆかしがり」は「ゆかし」(見たい・知りたい)に、そういう気持ちを表に出す意の接尾語「がる」が付いた形で、「知りたがって」という意味です。「いとほしく」は「いとほし」の連用形で、「かわいそうに、気の毒に」という意味です。
現代語訳:「幼い人が、かわいらしい様子で、物事を知りたがって尋ねるのを、(その様子を)いじらしく思って、答えてやった。」
答え:うつくしき(かわいらしい)/ゆかしがり(知りたがって)/いとほしく(いじらしく、気の毒に)
確認問題
問題
「かかる目を見ることは、いとすさまじきわざなり。」の傍線部「すさまじき」の意味を答えよ。
答え
興ざめな、殺風景な(現代語の「すさまじい(激しい)」ではない点に注意)