漢文 / 重要句法
疑問形・反語形
要点整理
疑問形の基本の形
漢文の疑問形は、多くの場合、次の2つの要素の組み合わせでできています。
- 疑問詞(何・誰・安・胡・奚など、「何・誰・どこ・なぜ」にあたる語)
- 文末の助字(乎・哉・也・邪・耶など。多くは「か」「や」と読む)
代表的な疑問詞には、次のようなものがあります。
| 疑問詞 | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 誰・孰 | たれ(か)・いづれ(か) | 誰が、どちらが |
| 何 | なに(を)・なんぞ | 何を、なぜ |
| 安・焉 | いづくにか・いづくんぞ | どこに、どうして |
| 胡・奚 | なんぞ | なぜ |
| 何如・如何 | いかん | どうであるか |
| 幾何 | いくばく | どれくらい |
疑問詞が文の最初(または動詞の前)に置かれ、文末が乎・哉・也などで終わる形が、疑問形のもっとも基本的なパターンです。
反語形とは何か
反語形は、疑問形とまったく同じ形をしていながら、話し手が本当に答えを知りたくて尋ねているのではなく、答えがすでに明らかであることを、あえて疑問の形で強調して述べる言い方です。
たとえば「豈に楽しからずや」(あに楽しからずや)は、形の上では「楽しくないだろうか」という疑問文ですが、実際の意味は「なんと楽しいことではないか(=とても楽しい)」という、強い肯定を表しています。日本語に訳すときは「どうして〜か、いや〜ない」「なんと〜ではないか」のように、反対の内容を強調する形にするのが基本です。
疑問か反語かを見分けるコツ
疑問形と反語形は文の形だけでは区別できないことが多く、文脈から判断することが基本になります。ただし、判断の手がかりになるポイントはいくつかあります。
- 「豈」(あに)が使われていたら、ほぼ確実に反語です。「豈〜ん(や)」の形は、詠嘆形のトピックでさらに詳しく扱いますが、疑問形・反語形の判断でもよく使われる合図になります。
- 話し手が本当に答えを知らず、相手に答えを求めている場面なら疑問、すでに常識的・文脈的に答えが一つしかありえないことを、あえて問いかけている場面なら反語です。
- 書き下し文にしたとき、文末が意志・推量の助動詞「ん」を伴って「〜んや」「〜らんや」のような形になることが多いのは反語です。単に「〜か」「〜や」で終わるだけなら疑問であることが多いですが、これは絶対的な区別ではなく、あくまで目安です。
- 反語文を現代語訳するときは、「どうして〜か、いや〜ない」のように、いったん疑問の形を作ってから、それを否定して逆の内容(肯定なら肯定、否定なら否定の逆)を強調する訳し方をします。
いずれの手がかりも「絶対のルール」ではなく、最終的には文章全体の内容と流れから判断する必要があります。同じ「不亦〜乎」という形でも、文脈次第では素直な疑問として使われることも理論上はありえますが、入試や教科書で扱われる「不亦〜乎」は、ほぼ例外なく反語として使われます。
例題
例題1(基本)
問題
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。また、疑問と反語のどちらか答えよ。
汝 何 為ル 者ゾ。
解答・解説を見る
疑問詞「何」があり、「〜者ゾ」という形で終わっています。この文は、話し手が相手の正体を本当に知らず、素直に尋ねている場面で使われる形です。反語だと判断させるような文脈上の手がかり(「豈」などの語や、明らかに答えが分かりきっている状況)がないため、これは疑問です。
答え:汝何為る者ぞ。/ お前は何をする者か。(疑問)
例題2(標準)
問題
次の文を書き下し文にし、現代語訳せよ。また、疑問と反語のどちらか答えよ。
学而時習レ之、不二亦説一乎。
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「学びて時に之を習ふ」に続けて、「不二亦説一乎」の部分を考えます。「説」にレ点はありませんが、「亦」「説」の2字を隔てて「不」に返る一二点が付いているので、「亦説ばしからず」となり、文末の「乎」を「や」と読んで「亦説ばしからずや」となります。
この「不亦〜乎」(またまた〜ずや)という形は、疑問と反語を見分けるコツで説明した通り、ほぼ確実に反語として使われる決まり文句です。「学んだことを機会があるたびに復習する、これはなんと喜ばしいことではないか」という、話し手自身がすでに「喜ばしい」と確信していることを、あえて問いかけの形で強調しているのです。
答え:学びて時に之を習ふ、亦説ばしからずや。/ 学んだことを、機会があるたびに復習する。これはなんと喜ばしいことではないか(=とても喜ばしいことだ)。(反語)
これは『論語』の冒頭に置かれた、非常に有名な一節です。
例題3(応用)
問題
次の文を現代語訳せよ。また、疑問と反語のどちらか、そう判断した理由もあわせて答えよ。
燕雀安 知二鴻鵠之志一哉。
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「燕雀安くんぞ鴻鵠の志を知らんや」と読みます。「安」は「いづクンゾ」と読む疑問詞で、文末は「哉」(や)で終わっています。
形の上では「燕や雀のような小さな鳥に、どうして鴻(おおとり)や鵠(白鳥)のような大きな鳥の志が分かるだろうか」という疑問文ですが、内容をよく考えると、これは話し手(大きな志を持つ人物)が「燕や雀のような、志の小さい者たちに、自分の大きな志などわかるはずがない」と、最初から確信を持って述べている場面です。答えが「(燕雀には)わからない」以外にありえないことを、あえて疑問の形で強調しているので、これは反語だと判断できます。
答え:燕や雀のような小さな鳥に、どうして鴻や白鳥のような大きな鳥の志が分かるだろうか、いや、分かるはずがない。(反語)
これは『史記』陳渉世家にある言葉で、若いころ人に雇われて働いていた陳渉が、大きな志を笑われたときに発したとされる、有名な一節です。
確認問題
問題
次の文を現代語訳せよ。また、疑問と反語のどちらかも答えよ。
一 日 之 長、何 足レ 恃ムニ 乎。
答え
わずか一日だけ年上であることなど、どうして頼るに足りるだろうか、いや、頼るに足りない。(反語)