現代文 / 設問対応の技術

記述問題の書き方(要素を過不足なく)

要点整理

記述問題は「要素」の積み重ねで採点される

記述問題は、選択肢問題と違って「正解か不正解か」の二択ではなく、多くの場合、答えに含めるべき内容を複数の要素に分解し、それぞれの要素が書けているかどうかで部分点が積み上げられる、という採点方式(部分点方式)がとられています。

したがって、記述問題を解くコツは、名文を書くことではなく、採点者が設定しているであろう要素を、漏れなく本文中から見つけ出し、過不足なく1つの文にまとめることに尽きます。「うまく書こう」とする前に、「必要な要素をすべて拾えているか」を最優先で考えましょう。

要素の見つけ方

  1. 設問(傍線部の内容説明・理由説明など)を確認し、何が問われているかを明確にする。
  2. 傍線部を、主語・述語・修飾語などのパーツに分解する(「傍線部内容説明問題の解き方」で学んだ手順)。
  3. 分解した各パーツについて、本文中の言い換え箇所・理由に当たる箇所を、それぞれ個別に探す。
  4. 見つかった箇所の数だけ、解答に含めるべき「要素」があると考える。字数が多い設問ほど、要素の数も多いのが一般的な目安である。

過不足なくまとめる

要素を集めたら、それらを1つの自然な文につなぎ合わせます。このとき、次の点に注意しましょう。

  • 主語を明確にする:本文では省略されている主語も、記述解答では補って明示する。
  • 文末表現を、設問の問い方に対応させる:「なぜか」と問われたら「〜から。」「〜ため。」で終える。「どういうことか」と問われたら「〜ということ。」で終える。
  • 本文にない情報を付け加えない:自分の意見や、一般常識からの推測を書き加えると、過剰な記述として減点の対象になる。
  • 要素を書き漏らさない:字数を使い切っていても、必要な要素の1つが抜けていれば、その分だけ減点される。

字数調整のコツ

指定字数に対して要素が多すぎる場合は、まず核となる最も重要な要素(多くは傍線部に最も近い言い換え・理由)を書き、残りの字数で他の要素を補足する、という優先順位をつけましょう。逆に、要素を書き終えても字数が余る場合は、本文中の具体例をもう一段抽象化した説明を加えたり、要素間のつながりを示す言葉を補ったりして、字数を埋めます。ただし、字数を埋めるためだけに本文にない情報を創作することは避けましょう。

記述と選択肢の関係

記述問題で要素を見つける力は、選択肢問題を解く力の土台でもあります。選択肢問題では、正解の選択肢はこれらの要素を過不足なく含んだ文になっており、誤答の選択肢は、要素の一部が欠けていたり、余計な要素が付け加えられていたりします。記述問題の練習を重ねることは、結果として選択肢問題の精度も高めることにつながります。

例題

例題1(基本)

問題

次の文章の傍線部「彼の作品は、時代を先取りしすぎていた」とはどういうことか、40字以内で説明せよ。

彼の作品は、時代を先取りしすぎていた。発表当時はほとんど評価されなかったが、後年になって、同じ発想を取り入れた作品が次々と登場し、彼の先見性がようやく世間に認められるようになった。

解答・解説を見る

まず要素を探します。傍線部「時代を先取りしすぎていた」の言い換えに当たるのは、直後の「発表当時はほとんど評価されなかったが、後年になって、同じ発想を取り入れた作品が次々と登場し、彼の先見性がようやく世間に認められるようになった」という部分です。

ここから、要素は大きく2つに分解できます。要素①「発表当時は理解・評価されなかった」、要素②「後になって、同じ発想の作品が現れ、先見性が認められた」です。この2つをつなぎ合わせて解答を作ります。

答え:発表当時は理解されなかったが、後に同じ発想の作品が現れ、先見性が認められたということ。(39字)

例題2(標準)

問題

次の文章の傍線部「その決断は、周囲から強く反対された」のはなぜか。本文中の2つの理由をふまえて50字程度で説明せよ。

彼女は、安定した大企業を辞めて、まだ実績のない小さな団体に加わることを決めた。その決断は、周囲から強く反対された。収入が大きく下がることは目に見えていたし、これまで積み上げてきたキャリアを手放すことにもなるからだ。

解答・解説を見る

理由を示す表現「〜からだ」の直前を確認すると、2つの理由が並列で述べられていることが分かります。要素①「収入が大きく下がることが目に見えていた」、要素②「これまで積み上げてきたキャリアを手放すことになる」です。

字数指定が50字程度とやや長いことからも、要素が2つ以上あることが推測できます。2つの要素を漏らさず、対等な形でつなぎ合わせて解答を作りましょう。

答え:収入が大きく下がることが見込まれるうえに、これまで積み上げてきたキャリアも手放すことになるから。(48字)

例題3(応用)

問題

次の文章の傍線部「便利さの追求は、両刃の剣として私たちに突きつけられている」とはどういうことか。対比構造もふまえて60字程度で説明せよ。

これまで、便利な道具を発明することは、無条件に人類の進歩だと考えられてきた。しかし、便利さの追求は、両刃の剣として私たちに突きつけられている。道具が代わりに担ってくれる作業が増えるほど、私たち自身がその作業を通じて身につけてきたはずの技能や感覚は、少しずつ失われていくからである。

解答・解説を見る

この文章はA(旧来の考え:便利な道具の発明は無条件の進歩だ)とB(筆者の主張:便利さの追求は両刃の剣だ)という対比構造になっています。傍線部はBに当たる部分で、「両刃の剣」という比喩の中身を、直後の一文が具体化しています。

要素を分解すると、要素①「便利さを追求すること自体は一定の利点をもたらす(=道具が作業を代わりに担ってくれる)」、要素②「その一方で、その作業を通じて身につけてきた技能や感覚が失われるという欠点も伴う」の2つです。「両刃の剣」という比喩表現は、この利点と欠点が表裏一体であることを意味しているので、解答には両方の側面を必ず含める必要があります。

答え:道具が作業を代わりに担ってくれる利点がある一方で、その作業を通じて身につけてきた技能や感覚が失われるという欠点も伴うということ。(64字)

確認問題

問題

次の文章の傍線部「彼はあえて、完成前の作品を人前にさらした」のはなぜか、説明せよ。

彼はあえて、完成前の作品を人前にさらした。1人で完成させてから発表するよりも、途中の段階で他人の視点を取り入れる方が、自分では気づけなかった弱点を早く見つけられると考えたからだ。

答え

1人で完成させてから発表するより、途中で他人の視点を入れる方が、自分で気づけない弱点を早く見つけられると考えたから。