漢文 / 重要句法

比較形・選択形

要点整理

比較形:A 於(于・乎) B

「AはBより〜だ」という比較は、形容詞・動詞 + 於(于・乎) + 比較の対象という形で表します。「於」は本来「〜に」「〜より」を表す前置詞ですが、比較の文では「より」と読み、比較する対象を導きます。

於・于・乎はどれも同じように使われ、意味の違いはほとんどありません。これらは「置き字」の仲間で、それ自体には返り点が付かず、読みません。形容詞・動詞に付いたレ点は、この於(于・乎)を飛び越えて、比較の対象に返る、という指示になります。比較の対象には、「於」の意味を表す送り仮名「より」を補って読みます。

最上級:莫レ如(若) A / 莫レ大焉 など

「〜に勝るものはない」「〜が一番だ」という最上級の意味は、莫(無)+レ点+如(若)+比較の対象という形でよく表されます。

「莫レ如二A一。」は「Aに若くは莫し。」(Aに及ぶものはない=Aが一番だ)と読みます。「若」の代わりに「如」が使われることもあり、意味は同じです。

選択形:与二其A一、寧B

2つのうちどちらかを選ぶべきだと述べるときは、与二其A一、寧B(其のAするよりは、寧ろBせよ)という形をよく使います。

  • 与其A:「Aするくらいなら」「Aするよりは」(否定的に評価される選択肢)
  • 寧B:「むしろBせよ」「Bする方がよい」(推奨される選択肢)

この構文で大切なのは、「与其」が付いている方が「望ましくない・避けるべき」選択肢で、「寧」が付いている方が「望ましい・選ぶべき」選択肢だという点です。うっかり逆に取ってしまうと、意味が正反対になってしまうので注意しましょう。

『論語』には、「礼は、其の奢らんよりは、寧ろ倹しかれ。」(儀礼は、贅沢であるくらいなら、むしろ質素である方がよい)という、この形を使った有名な言葉があります。

例題

例題1(基本)

問題

次の文を書き下し文にせよ。

氷 寒レ 於 水。

解答・解説を見る

「於」は置き字なので、それ自体には返り点が付かず、読みません。「寒」に付いたレ点は、この「於」を飛び越えて、すぐあとの「水」に返る、という指示です。「水」に、比較の基準を表す送り仮名「より」を補って「水より」と読み、それから「寒」に返ります。

読む順は「氷→水→寒」です。

答え:氷は水より寒し。

「氷は、もとになった水よりも冷たい」という意味です。

例題2(標準)

問題

次の文を書き下し文にせよ。

学問 莫レ如二 読書一。

解答・解説を見る

まず内側の一二点を処理します。「読」「書」をそのままの順で読んでから、「如」に返ります。「読書に若く」となります。

「如」の直前(隣)にある「莫」にはレ点が付いています。レ点は「すぐ次の字を先に読んでから返る」という記号なので、ここでは「如」以下(読書に若く、まで)がすべて読み終わった時点で、「莫」に返ります。

読む順は「学問→読→書→如→莫」です。

答え:学問は読書に若くは莫し。

「学問については、読書に勝るものはない(読書が一番だ)」という意味です。

例題3(応用)

問題

次の文を書き下し文にせよ。

与二 其 労(セン)一、寧 逸(セヨ)。

解答・解説を見る

前半を考えます。「其」「労」を先に読んでから、「与」に返ります(一二点)。「与」は「よりは」と読みます。「其の労せんよりは」となります。

後半「寧逸。」は、返り点がなく、そのままの順で読みます。「寧」は「むしろ」、「逸」は命令の意味で「逸せよ」となります。

答え:其の労せんよりは、寧ろ逸せよ。

「あくせく働くくらいなら、むしろのんびり過ごせ」という意味になります。この「与其A、寧B」という形は、『論語』の「礼は、其の奢らんよりは、寧ろ倹しかれ。」(儀礼は贅沢であるより質素である方がよい)のように、実際の入試問題でもよく取り上げられる、代表的な選択形の構文です。

確認問題

問題

次の文を書き下し文にせよ。

甲 勝レ 於 乙。

答え

甲は乙より勝る。