漢字・語彙・文法 / 漢字の読み書き
同訓異字
要点整理
同じ訓読みを持ちながら、意味の違いによって使う漢字が変わる語を同訓異字と呼びます。前の単元で学んだ「同音異義語」が音読みの熟語どうしの区別だったのに対し、同訓異字は訓読み(多くは1字だけの言葉)どうしの区別です。
同訓異字を見分けるコツは、「何が」「どのような状態・動作になるのか」という、その言葉が結びつく相手(主語や目的語)に注目することです。以下に、代表的な同訓異字のグループを整理します。
「あつい」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 暑い | 気温が高い(天候・気候について) | 今日はとても暑い。 |
| 熱い | 物・体温・気持ちが高い(温度・情熱について) | 熱いお茶を飲む。熱い声援を送る。 |
| 厚い | 物の厚み・人情や信頼の深さ | 厚い本。友情に厚い人。 |
「あげる」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 上げる | 位置・程度を高くする | 手を上げる。値段を上げる。 |
| 挙げる | 例として示す、行事を行う、成果を出す | 例を挙げる。結婚式を挙げる。成果を挙げる。 |
| 揚げる | 空中に浮かせる、油で調理する | 旗を揚げる。天ぷらを揚げる。 |
「おさめる」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 収める | 手に入れる、しまい込む | 成功を収める。箱に収める。 |
| 納める | 金品を渡す、決まった所に落ち着かせる | 税金を納める。 |
| 治める | 秩序を保って統治する、鎮める | 国を治める。 |
| 修める | 学問や行いを身につける | 学問を修める。 |
「はかる」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 図る | 計画する、企てる | 解決を図る。 |
| 計る | 時間や数量を見積もる | 時間を計る。 |
| 測る | 長さ・広さ・深さなどを調べる | 距離を測る。 |
| 量る | 重さ・体積を調べる | 体重を量る。 |
| 謀る | よくない計画を企てる、だます | 暗殺を謀る。人を謀る。 |
「とる」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 取る | 手に持つ、手に入れる(最も一般的) | メモを取る。 |
| 採る | 選び用いる、採集する | 新しい方法を採る。山菜を採る。 |
| 執る | 仕事や事務を行う | 指揮を執る。事務を執る。 |
| 撮る | 写真や映像を記録する | 写真を撮る。 |
| 捕る | 生き物を捕まえる | 魚を捕る。 |
「つとめる」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 努める | 力を尽くして頑張る | 解決に努める。 |
| 務める | 役目や任務を果たす | 議長を務める。 |
| 勤める | 会社などに雇われて働く | 会社に勤める。 |
「のぞむ」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 望む | 願う、遠くを見やる | 平和を望む。山を望む。 |
| 臨む | その場に直面する、出席する | 試験に臨む。式典に臨む。 |
「あらわす」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 表す | 気持ちや考えを外に示す | 感謝の気持ちを表す。 |
| 現す | 隠れていたものが見えるようになる | 姿を現す。 |
| 著す | 書物を書いて世に出す | 書物を著す。 |
「きく」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 聞く | 音や声が耳に入る、尋ねる | 物音を聞く。道を聞く。 |
| 聴く | 注意深く耳を傾ける | 音楽を聴く。 |
| 効く | 効果が現れる | 薬が効く。 |
| 利く | うまく働く、可能である | 気が利く。融通が利く。 |
「うつす」のグループ
| 漢字 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| 写す | そのままに書き取る、写真に撮る | ノートを写す。写真を写す。 |
| 映す | 画面や鏡などに像を映し出す | スクリーンに映す。 |
| 移す | 場所や位置を変える | 荷物を移す。 |
例題
例題1(基本)
問題
次の( )に入る最も適当な漢字を、あとの語群から選べ。
熱いお茶よりも、( )紅茶が好きだ。
【語群】暑い・熱い・厚い
解答・解説を見る
「紅茶」は飲み物なので、温度が高いことを表す「熱い」を使います。「暑い」は気温・気候について、「厚い」は物の厚みや人情の深さについて使う字なので、この文脈には合いません。
答え:熱い
例題2(標準)
問題
次の文中の傍線部「おさめる」を、それぞれ最も適当な漢字に直せ。
彼は大学で法律学をア:おさめたのち、会社に入り、税金をイ:おさめる仕事に携わり、のちには部署全体をウ:おさめる立場になった。
解答・解説を見る
アは「学問を身につける」という意味なので「修める」です。イは「金銭を決まった所に渡す」という意味なので「納める」です。ウは「組織を統率し、秩序を保つ」という意味なので「治める」です。
同じ「おさめる」でも、何を対象にしているか(学問・お金・組織)によって使う漢字が変わることを、この例文で確認しておきましょう。
答え:ア=修める、イ=納める、ウ=治める
例題3(応用)
問題
次の文中の傍線部「はかる」を、それぞれ最も適当な漢字に直せ。
会議では、来月の予算をア:はかる方法と、事業の効率化をイ:はかる方策について話し合い、あわせて所要時間もウ:はかった。
解答・解説を見る
アは「予算(お金の額)を調べる」という意味に見えますが、ここでは「予算をどう使うか計画を立てる」という文脈なので「図る」が適切です。イも「効率化という目標に向けて計画する」という意味なので「図る」です。ウは「時間(時の長さ)を計測する」という意味なので「計る」です。
「はかる」は特に使い分けが難しい同訓異字です。「計画・意図する」なら図る、「時間・数」なら計る、「長さ・深さ・広さ」なら測る、「重さ・体積」なら量る、とまず大きく分類してから、細かい文脈で判断すると整理しやすくなります。
答え:ア=図る、イ=図る、ウ=計る
確認問題
問題
次の文中の傍線部「とる」を、最も適当な漢字に直せ。
彼は入社以来20年にわたり、この部署の経理事務をとってきた。
答え
執る(「事務・仕事を行う」の意味。「事務を執る」は決まった言い方として覚えておくとよい。)