現代文 / 現代文の読み方の基本
キーワード・キーセンテンスの発見
要点整理
キーワードとは何か
評論文には、文章全体を通じて何度も繰り返し登場する語があります。これをキーワードと呼びます。キーワードは、筆者がその文章で最も論じたいテーマそのものであることが多く、キーワードを見つけることは、文章のテーマをつかむ最短の方法です。
キーワードを見つけるコツは、次の2点です。
- 文章中に2回以上繰り返し登場する語(名詞であることが多い)に印をつける。
- 印をつけた語の中でも、具体的な物の名前ではなく、「自由」「多様性」「合理性」のように、ある程度抽象度の高い語に注目する。
評論文のタイトル(題名)がついている場合、タイトルに使われている語がそのままキーワードであることも非常に多いので、タイトルは軽視せずに必ず確認しましょう。
キーセンテンスとは何か
キーセンテンスとは、文章の中で筆者の主張が最も凝縮された形で表現されている一文のことです。文章全体を1文に要約するとしたら、この一文が最も近い、というような文だと考えるとよいでしょう。
キーセンテンスは、次のような手がかりで見つけることができます。
- 「まとめ」の役割を持つ段落(文章の最後、あるいは各意味段落の最後)の中の一文
- 「つまり」「このように」「要するに」など、言い換え・要約の接続語の直後に置かれた一文
- 「私は〜と考える」「〜べきである」「〜ではないだろうか」のように、筆者の判断・評価がはっきりと示された一文
- キーワードが複数個、その一文の中に集中して使われている一文
キーワードとキーセンテンスの関係
キーワードは「文章のテーマ」を示す単語であるのに対し、キーセンテンスは「そのテーマについて筆者が何を主張しているか」を示す一文です。両者は車の両輪のような関係にあり、キーワードだけを拾って「この文章のテーマは○○だ」と分かっても、キーセンテンスまで押さえなければ「筆者が○○について具体的に何を言いたいのか」までは分かりません。逆にキーセンテンスだけを覚えていても、文章全体でその一文がどういう位置づけにあるのかを見失うと、設問で問われる細部の対応がとれなくなります。要約問題や主旨を問う問題では、この両方をセットで押さえることが必須です。
キーワードの言い換えに注意する
筆者は、同じキーワードを毎回まったく同じ表記で使うとは限りません。「自由」というキーワードが、文章の途中から「束縛されない状態」「自分の意志で選べること」といった、言い換えられた表現で登場することもよくあります。表記が変わっても指している概念が同じであれば、それも同じキーワードの仲間として扱う必要があります。この「同じ内容を別の言葉で言い換える」という評論文特有のクセに慣れることが、読解力向上の近道です。
例題
例題1(基本)
問題
次の文章のキーワードとして最も適切な語を、文中から抜き出せ。また、キーセンテンスに当たる一文を抜き出せ。
現代社会では、効率を上げることが常に善いこととして扱われる。しかし、効率化を突き詰めた結果、私たちは「待つ」という経験そのものを失いつつあるのではないか。電子レンジは調理を待つ時間を短くし、動画配信サービスは次の回を待つ時間をなくした。待つことがなくなれば、確かに時間は節約できる。しかし、待っている間に生まれる期待や、待った末に得られる満足感もまた、効率化と引き換えに失われている。効率だけを追い求める前に、私たちは「待つこと」の価値を、もう一度見直す必要があるのではないだろうか。
解答・解説を見る
文章中に繰り返し登場する語を数えてみると、「効率(効率化)」が4回、「待つ(待つこと)」も4回登場しており、どちらもこの文章の中心的な語です。ただし、文章の最後の一文で筆者が「見直す必要がある」と訴えている対象は「待つことの価値」であり、「効率」はむしろその対極に置かれた比較対象として使われています。
したがって、この文章が最終的に論じたいテーマ(キーワード)としては、「待つこと」が最もふさわしいと判断できます。
キーセンテンスは、筆者の主張がはっきり示された最後の一文、「効率だけを追い求める前に、私たちは『待つこと』の価値を、もう一度見直す必要があるのではないだろうか。」です。
答え:キーワード「待つこと」/ キーセンテンス「効率だけを追い求める前に、私たちは『待つこと』の価値を、もう一度見直す必要があるのではないだろうか。」
例題2(標準)
問題
次の文章で、筆者が最終的に主張したいキーワードは「個性」「協調性」のどちらの側にあるか。文中の言い換え表現に注意して答えよ。
学校教育の場では、しばしば「個性を伸ばすこと」と「協調性を身につけること」が、対立する2つの目標であるかのように語られる。だが、この2つは本当に対立するものだろうか。他人と足並みをそろえることばかりに気を取られていると、自分がどう感じ、どう考えるかという内面の声に耳を傾ける機会が失われていく。逆に、周囲との関わりの中でこそ、自分と他人の違いに気づき、「自分らしさ」がかえって輪郭を持ってくるということもある。他者という鏡がなければ、自分の輪郭を知ることさえできないのである。
解答・解説を見る
この文章では「個性」という語そのものは最初の一文にしか出てきませんが、後半で「自分がどう感じ、どう考えるか」「自分らしさ」「自分の輪郭」という表現が繰り返し登場しています。これらはすべて、「個性」という語を言い換えた表現だと考えられます。
一方、「協調性」に対応する言い換えとしては「他人と足並みをそろえること」「周囲との関わり」「他者という鏡」が使われています。
文章の結論部分では、「他者という鏡がなければ、自分の輪郭を知ることさえできない」と述べられており、これは「協調性(他者との関わり)があるからこそ、個性が育つ」という関係を主張しています。つまり筆者が最終的に肯定的に位置づけたい、より重要なキーワードは「個性」の側にあり、「協調性」はそれを支える条件として位置づけられています。
答え:個性(「自分らしさ」「自分の輪郭」という言い換えを通じて、文章全体で最も肯定的に論じられているテーマであるため)
例題3(応用)
問題
次の文章のキーセンテンスとして最も適切な一文を選び、その根拠を説明せよ。
ア:情報化社会では、誰もが大量の情報に日常的に触れている。 イ:検索すれば、たいていの疑問には数秒で答えらしきものが見つかる時代になった。 ウ:しかし、答えがすぐに見つかることと、その答えを自分の言葉で説明できることの間には、大きな隔たりがある。 エ:私たちに本当に必要なのは、情報を素早く手に入れる技術ではなく、手に入れた情報を自分の中で咀嚼し、他人に説明できる形に組み立て直す力なのである。
解答・解説を見る
ア・イは、情報化社会の現状を説明した「問題提起」に近い導入部分です。ウは「しかし」で始まる逆接の一文で、ア・イで述べられた前提に対して、疑問を投げかける役割を果たしています。エは、ウで提示された問題(「答えを見つけること」と「説明できること」の隔たり)を受けて、「私たちに本当に必要なのは〜である」と、筆者の判断をはっきりと示しています。
ウは逆接によって話の方向を転換させる重要な一文ですが、それ自体はまだ「隔たりがある」という指摘にとどまっており、筆者が何をすべきだと考えているかまでは述べていません。それに対してエは、「〜が必要なのである」という断定の形で、筆者の主張そのものを最も凝縮して示しています。
答え:エ(「〜が必要なのである」という断定の形で、筆者の主張そのものが最も凝縮された形で示されているため。ウは主張への転換点だが、主張の具体的な内容はまだ示されていない)
確認問題
問題
次の文章のキーワードとして最も適切な語を、文中から抜き出せ。
私たちは、失敗を避けるべきものとして扱いがちである。しかし、新しいことに挑戦する場面では、失敗は避けるべきものというより、むしろ挑戦した証そのものだと言える。失敗を恐れて挑戦しなければ、失敗はしないかわりに、成功する可能性もまたゼロのままである。失敗を重ねながら少しずつ前に進む姿勢こそ、挑戦の名にふさわしい。
答え
失敗