古典(古文) / 古文文法・用言の活用
動詞の活用(1)四段・上一段・上二段活用
要点整理
古文の動詞は、活用のしかたによって9種類に分けられます。この単元では、そのうちの四段活用・上一段活用・上二段活用の3つを扱います(残り6種類は次のページで扱います)。
どの活用の種類でも、動詞は次の6つの活用形に変化します。
未然形・連用形・終止形・連体形・已然形・命令形
現代語文法の「仮定形」にあたるものが、古文では已然形と呼ばれる点に注意しましょう。已然形は「すでにそうなっている」ことを表す形で、確定条件(「ので」「すると」)や、係り結びの「こそ」の結びとして使われます。
四段活用
四段活用は、活用語尾がア段・イ段・ウ段・エ段の4つの段にわたって変化する活用です(ウ段は終止形・連体形の2か所で使われるので、使う段としては4種類)。古文動詞の中で最も数が多い、いわば「標準の活用」です。
「書く」(カ行四段活用)を例に見てみましょう。
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| 書か | 書き | 書く | 書く | 書け | 書け |
語幹「書」に続く音が、か・き・く・く・け・け と、ア段→イ段→ウ段→ウ段→エ段→エ段の順に変化しているのがわかります。現代語の五段活用(書か・書き・書く・書く・書け・書け)とほとんど同じ形なので、比較的なじみやすい活用です。
上一段活用
上一段活用は、五十音図の「イ段」を中心に活用する、語数の少ないグループです。代表的な動詞は次の通りで、まとめて覚えてしまうのが効率的です。
「見る・着る・煮る・干る・居る(ゐる)・射る・鋳る・率る(ゐる)」
これらの頭文字を並べた「ひいきにみいる(贔屓にみいる)」という語呂合わせで覚えるのが定番です。複合動詞(「用ゐる」など)も同じ活用をします。
「見る」(マ行上一段活用)の活用表は次の通りです。
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| 見 | 見 | 見る | 見る | 見れ | 見よ |
すべての活用形でイ段の音「み」が現れ、そこに「る」「れ」「よ」が付くかどうかだけが変わります。語幹と活用語尾の区別がほとんどつかないほど、活用語尾がシンプルな点が特徴です。
上二段活用
上二段活用は、イ段とウ段の2つの段にわたって活用します。「上一段」との違いは、終止形がウ段の音で終わる(「~る」の形にならない)点です。
「過ぐ」(ガ行上二段活用)を例にします。
| 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|
| 過ぎ | 過ぎ | 過ぐ | 過ぐる | 過ぐれ | 過ぎよ |
終止形が「過ぐ」とウ段で終わり、連体形になって初めて「過ぐる」と「る」が付く点が、上一段の「見る(終止形からすでに"る"がある)」と違うところです。他に「落つ」「起く」「恋ふ」なども上二段活用です。
活用の種類の見分け方
動詞がどの活用の種類に属するかを見分けるには、その動詞に打消の助動詞「ず」を付けて、直前の音がどの段になるかを確認するのが基本の手順です。
- 動詞の未然形に「ず」を付ける。
- 「ず」の直前の音がア段なら → 四段活用
- 「ず」の直前の音がイ段なら → 上一段活用 か 上二段活用
- 直前がイ段だった場合、さらに終止形を確認する。終止形が「~る」で終わる(語幹がイ段の音を含んだまま「る」が付く)なら上一段、終止形がウ段の音1文字で終わる(「る」を伴わない)なら上二段。
例えば「見る」は「見ず」で「み」(イ段)、終止形も「見る」で「る」を伴う → 上一段。「過ぐ」は「過ぎず」で「ぎ」(イ段)、終止形は「過ぐ」で「る」を伴わない → 上二段、と判定できます。
例題
例題1(基本)
問題
次の動詞の活用の種類を答えなさい。また、それぞれの終止形を答えなさい。
(1) 「聞く」の連用形「聞き」 (2) 「見る」の已然形「見れ」
解答・解説を見る
(1) 「聞く」に「ず」を付けると「聞かず」となり、直前の音は「か」(ア段)です。ア段なので四段活用と判定できます。終止形はそのまま聞くです。
(2) 「見る」に「ず」を付けると「見ず」となり、直前の音は「み」(イ段)です。イ段なので上一段か上二段の可能性がありますが、終止形を確認すると「見る」で「る」を伴っているので、上一段活用です。終止形は見るです。
答え:(1)四段活用・聞く (2)上一段活用・見る
例題2(標準)
問題
『竹取物語』の一節「それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうてゐたり」について、傍線部「ゐたり」の「ゐ」の活用の種類と活用形を答えなさい。
解答・解説を見る
「ゐたり」は、動詞「ゐる(居る)」の連用形「ゐ」に、存続の助動詞「たり」が付いた形です。まず動詞「ゐる」だけを取り出して考えます。
「ゐる」に「ず」を付けると「ゐず」となり、直前の音は「ゐ」(ワ行のイ段にあたる音)です。「ゐる」は上一段活用の代表的な9語の1つ(「ひいきにみいる」の「い(居る)」)なので、上一段活用と判断できます。
活用形については、「ゐたり」の「ゐ」は、助動詞「たり」(連用形に接続する助動詞)の直前にあるので連用形です。上一段活用の活用表を確認すると、未然形と連用形はどちらも「ゐ」で同じ形なので、形だけでは区別がつきません。このような場合は、後に何が続いているか(接続)で活用形を判断します。
答え:活用の種類は上一段活用、活用形は連用形
例題3(応用)
問題
次の動詞のうち、上二段活用であるものを2つ選び、それぞれ選んだ理由を説明しなさい。
「起く」「着る」「泣く」「恋ふ」
解答・解説を見る
1つずつ「ず」を付けて確認します。
- 「起く」→「起きず」。直前は「き」(イ段)。終止形「起く」はウ段1文字で終わり「る」を伴わない → 上二段活用。
- 「着る」→「着ず」。直前は「き」(イ段)。ただし「着る」は「ひいきにみいる」に含まれる上一段活用の代表語であり、終止形も「着る」で「る」を伴う → 上一段活用。
- 「泣く」→「泣かず」。直前は「か」(ア段)→ 四段活用。
- 「恋ふ」→「恋ひず」…と考えたいところですが、これはハ行の動詞で、直前は「ひ」(イ段)。終止形「恋ふ」はウ段1文字で終わり「る」を伴わない → 上二段活用。
「着る」は「起く」「恋ふ」と同じくイ段の音を含みますが、終止形の形が違う(「る」を伴うかどうか)ために活用の種類が変わることに注意しましょう。
答え:起く・恋ふ(どちらも「ず」を付けた直前がイ段で、終止形がウ段1文字で終わるため)
確認問題
問題
動詞「落つ」に「ず」を付けた形と、その活用の種類を答えなさい。
答え
落ちず(直前は「ち」でイ段、終止形「落つ」はウ段1文字で終わるため、上二段活用)